2010年1月22日(金)「しんぶん赤旗」

「朝日」てい談の暴論

核持ち込み認め、三原則堅持?


 核兵器を持ち込ませずとした非核三原則の堅持と、核兵器を積んだ米軍艦船の日本寄港・領海通過は矛盾しない―。こういう珍論とも暴論ともいうべき議論が、朝日新聞紙上の鼎談(ていだん)(19日付)で行われています。外務省の核密約調査とからんで、核積載艦の寄港・領海通過を公然と認めようとする動きとして看過できません。

同盟強化論者

 「朝日」の鼎談は現行安保条約50年企画で、防衛省の長島昭久政務官、元外務省幹部・元首相補佐官の岡本行夫氏、元陸上自衛隊幹部の山口昇防衛大教授と、日米軍事同盟強化論者ばかりをそろえて行われています。

 そのテーマの一つが、核積載艦の寄港・領海通過を日米間の事前協議の対象外にし、自由な核持ち込みを認めた日米核密約の問題です。外務省の密約調査の結果が公表(2月予定)されるのを受け、米国の核抑止との関係をどう説明するのかとの司会の質問に、長島氏は「今後の政策にあたっては、非核三原則は堅持し、『持ち込ませず』の定義をより明確化する。事前協議は求める」と答えます。

 しかし、これを受けて岡本氏は「米国の解釈は一時寄港や領海通過は『持ち込み』ではない、だから非核三原則は守っていると。実際、日本が言っているのは三・五原則だ。本来の三原則に一時寄港と領海通過という〇・五がくっついてしまっている」と発言。司会から「領海通過や一時寄港を三原則の外に置いた場合、事前協議を求めるのか」と聞かれ、長島氏は「岡本さんの定義でいけば、それはプラス〇・五で三原則の外だから求める必要はない」と言うのです。

 つまり、2人の議論を合わせると、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずの非核三原則のうち「持ち込ませず」について、米側は、核積載艦の寄港・領海通過を含まないと解釈している。しかし、日本側は表向きは、「持ち込ませず」の原則に寄港・領海通過も含めており、プラス〇・五の三・五原則になっている。だから寄港・領海通過を公然と認めて〇・五を差し引いても、もとの三原則になるだけで、非核三原則「堅持」に変わりはない―ということになります。

 核積載艦の寄港・領海通過を認めようとする論者は従来、非核三原則を二・五原則に見直すべきだと主張してきました。これは、三原則から寄港・領海通過の〇・五を引いて二・五原則にするというものです。これに対し、公然と寄港・領海通過を認めながら非核三原則も「堅持」すると強弁する議論は今まで聞いたことがなく、アメリカ言いなりの詭弁(きべん)、驚くべき開き直りです。

核抑止正当化

 長島氏は「(一時寄港・領海通過について事前協議を)求めたら拡大抑止論は崩壊する」と言います。しかし、そうした米国の核戦略を「抑止」の名で正当化することこそ、標的になった国々に核兵器を持つ口実を与え、歯止めのない核拡散を生むことになります。

 鼎談では、核問題だけでなく、「日本は米軍の抑止力から最大限の恩恵を被っている」「それが嫌なら日米安保体制を出て、武装中立に行くしかない」(岡本氏)「緊密で対等な関係を結ぼうとすれば、日本の果たすべき責任はもっと大きくなる」(山口氏)など、同盟関係見直しへの脅しともいえる議論も展開しています。今の「朝日」の立場を象徴しています。(榎本好孝)



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