2010年1月22日(金)「しんぶん赤旗」
主張
スポーツ2010
選手の環境にも思いを向けて
今年のスポーツ界は、前半に、冬のオリンピックとパラリンピック、夏にはサッカーワールドカップを控える、国際交流の盛んな年です。
開幕が迫っているのが、バンクーバー(カナダ)での2月の冬季オリンピック、3月のパラリンピックです。雪や氷のきびしい自然に全力で立ち向かって挑戦する選手たちの姿は、人びとに深い感動と勇気を与えてくれるでしょう。日本選手が万全な準備で本番にのぞんでほしいものです。
選手や指導者の苦労
バンクーバーでの二つの冬季大会がテーマにしているのが“自然との共存”です。地球環境の保全にむけた世界の努力と連帯して、スポーツが施設づくりや競技方法でどんな工夫をこらしているのか、注目してみたいと思います。
6月から7月は、サッカーのワールドカップで沸き立つ季節です。舞台は南アフリカ、心配される治安や大会運営で立派に成功をおさめるよう願っています。
4大会連続出場の日本チームは、オランダ、デンマーク、カメルーンと同じグループになりました。「ベスト4進出」の高い目標を掲げているだけに日本のW杯招致に弾みがつく活躍を期待します。
熱のこもる国別対抗戦ですが、大会のモットーは“フェアプレー”です。選手のプレーはもとよりサポーターの応援でも、互いに健闘をたたえあう光景がスタジアムにあふれることをのぞみます。
選手やチームの成績に目を奪われがちなスポーツの国際交流ですが、この機会に目を向けたいのは、そこにいくまでの選手や指導者の苦労です。とりわけ、スポーツ環境の貧しい日本の場合は、大変なものがあります。
前回のトリノ冬季オリンピックで、金メダルに輝いたフィギュアスケートの荒川静香さんが、「リンクが閉鎖される。子どもたちの夢を奪わないで」と訴えたのが思い出されます。
昨年末のスポーツ予算の「事業仕分け」でも、「選手強化費は縮減」とされたことにたいし、「選手の経済負担を軽減してほしい」、「弱小といわれる競技にこそ支援を」、「スポーツ予算に現場の声を反映してほしい」など、強い要望が出されました。
安心して競技に専念できる環境を―。選手や指導者の切実な思いを実現するために、競技団体の取り組みとともに、国の支援を充実していくことが求められます。
人間の能力の可能性を切り開き、スポーツで国際交流をすすめる選手や指導者の活動を、社会的に支援していくことは世界の流れになっていることです。
しかし、日本では長年にわたった自民党政治のもとで、選手の身分保障、チーム・球団の保護、指導者制度の確立など、国が取り組むべき施策がないがしろにされてきました。
従来の枠組み転換して
政権がかわって、このほど民主党政府が発表したスポーツ予算も、有力競技の強化費補助が若干増えただけで、従来の枠組みは変わっていません。そこを転換し、選手や指導者の労苦がむくわれる環境整備に力を注ぐことです。
2010年代幕開けのスポーツの国際交流のなかで、選手や指導者が置かれている環境にも思いを向けてみていきたいものです。