2010年1月19日(火)「しんぶん赤旗」
主張
財政演説
経済立て直す戦略が見えない
国民の審判で自公政権を退場させてから、初の通常国会が始まりました。「政治を変えたい」という国民の切実な願いに応える国会にしていくことが求められます。
今国会では鳩山由紀夫首相と連立政権のこれまでの政策対応と今後の方針が厳しく問われます。
18日は菅直人財務相が第2次補正予算案について財政演説をしました。菅財務相は、2次補正で「現下の経済情勢へ緊急に対応するとともに、中長期的な成長力の強化を図る」と説明しました。
「構造改革」路線継続も
2次補正予算案は、緊急の対応としても中長期的な対応としても中途半端であると同時に、自公政治の転換という点でも重大な問題をはらんでいます。場当たり的な対応で、暮らしと経済を立て直す“戦略”が見えてきません。
失業問題では雇用保険の機能強化に取り組むとしていますが、最悪の就職難の中で失業給付の期限が切れて途方にくれる人が次々生まれています。雇用保険の積立金を活用して、直ちに「全国延長給付」を発動すべきです。
中小零細企業への緊急支援では、10年前の不況のときに実施した「貸し渋り特別保証」のような、全業種を対象にした利用しやすい対策が求められます。休業補償・直接支援の実施とともに、官公需の発注比率を大幅に引き上げ、保育所の建設など生活密着型の公共事業を進めて中小企業の仕事を増やす必要があります。
何より鳩山政権には、巨額のため込み(内部留保)を温存して国民に犠牲を強いる大企業に、どう社会的責任を果たさせるかという観点がまったく見られません。
大手製造業は「エコカー」「エコポイント」などによる増産を再び非正規雇用でまかない、残酷な労働者の「使い捨て」を繰り返そうとしています。トヨタが年末に部品価格の3割引き下げを要請したように、下請け中小企業に一方的にコスト削減を押し付ける動きが続いています。
政府の緊急対策は当面の部分的な止血策のようなものです。労働者と中小企業の犠牲をさらに広げる大企業の身勝手を許すなら、傷口がどんどん大きくなって止血策も追いつきません。
政権が「構造改革」路線を継続し、広げようとしていることは重大です。後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の応益負担の廃止は先送りする姿勢です。保育所不足を認可保育所の大幅増設で解決するのではなく、この分野に規制緩和を持ち込み、子どもの詰め込みで「安上がり」に済まそうとしています。
先送りや公的責任の放棄ではなく、社会保障の拡充にすっきりと転換することが求められます。
大企業に社会的責任を果たさせることとあわせて、社会保障の拡充への転換は、内需主導の日本経済を実現するための戦略としても極めて重要です。
早くも出てきた消費税
来年度予算案でも無責任な財源対策に終始した政権の主要閣僚から、早くも「消費税増税の議論に着手すべきだ」という声が上がっていることは見過ごせません。
軍事費と大企業・大資産家向けの行き過ぎた減税―。この「聖域」にメスを入れてこそ前政権からの消費税頼みを改め、暮らしに軸足を置いた経済戦略への転換を図ることが可能になります。
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