2010年1月16日(土)「しんぶん赤旗」
ハイチ地震
未曽有の被害なぜ
米国の干渉で最貧国に
【メキシコ市=菅原啓】カリブ海の島国ハイチで12日発生した大地震の未曽有の被害は、同国の貧困とそれをもたらした大国の干渉の歴史に改めて焦点を当てています。
ハイチは世界で最高品質の砂糖を生産するフランスの植民地でした。過酷な支配に反対して立ちあがった黒人奴隷の反乱が発展して、独立を達成したのは1804年。中南米で最初の独立国という輝かしい歴史をもっています。
20世紀に入ると、砂糖産業からの利益を狙った米国の支配が強まりました。1915年、米国の干渉権を認める条約を結ばされ、34年まで米国の保護国として軍事占領下におかれました。その後、57年からは米国の支援を受けたデュバリエ独裁政権が86年まで続きました。
米国の干渉と独裁政治の下、国の富は一部特権層と外国企業に独占され、国土は荒廃。独裁政権下で導入された新自由主義政策の結果、農業は壊滅的な打撃を受け、70年代には90%だった食料自給率が45%にまで低下。貧困層は8割を超え、世界でも最貧国の一つとなってしまいました。
民政復帰後も米国の干渉は続きました。最近では2004年、アリスティド大統領にたいして、不正選挙などの批判が高まり、独裁政権時代の弾圧部隊と関係する武装勢力の反乱なども重なって政情不安に陥りました。米国は事態の責任はアリスティド大統領にあるとして武力を背景に辞任させました。
その後、ブラジルなどを中心とした国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が治安維持のために駐留していますが、貧困や犯罪の多発など社会状況は基本的に改善されていません。
今回の地震では、倒壊した建物から負傷者を救出しようにも重機がない、外国からの支援物資が末端に届かないなどの事態も報じられています。
同国には一部外国企業の建物を除いて耐震性がある建物はほとんどありませんでした。米国や外国勢力の干渉に翻ろうされ、貧困が極度に広がり、自然災害への備えがほとんどできていなかった同国の実態を反映しています。
英紙ガーディアン13日付は、今回の甚大な被害を貧困の「長い歴史の結果」であり、その貧困は「世界史における植民地搾取のもっとも野蛮なシステム、これと結びついた何十年にもわたる植民地解放後の組織的抑圧の直接の結果だ」と指摘。米国や西側諸国がハイチに干渉してきた問題を厳しく批判しています。