2010年1月13日(水)「しんぶん赤旗」
どうすすめる温暖化防止 COP16へ(上)
座談会
日本共産党衆院議員 笠井 亮 さん
公害・地球懇COP15代表団長 橋本 良 仁さん
弁護士 川合 きり恵さん
昨年末にコペンハーゲンで開かれた地球温暖化防止の国連会議(COP15=国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)を受けて、年末メキシコでのCOP16に向け温暖化防止の運動をどう前進させるか。COP15に参加した、日本共産党の笠井亮衆院議員(党地球環境問題対策チーム責任者)、公害・地球環境問題懇談会代表団の橋本良仁団長(高尾山の自然をまもる市民の会事務局長)、川合きり恵弁護士が語り合いました。
川合 市民レベルでの運動の前進を実感
橋本 このテンポで間に合うのかの提起も
笠井 世界的な合意へ先進国が率先して
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橋本 海外で開かれる温暖化COPに公害地球懇の代表団が参加したのは今回が初めてです。水俣病訴訟の原告の方、東京の大気汚染公害被害者、高尾山天狗裁判の原告、全労連、生協労連、自治労連、全教、新日本婦人の会、それに学生の方など、合計26人の代表団になりました。COP15が開かれたベラセンターのほか、各国の320のNGO(非政府組織)の人々が集まった「クリマフォーラム」の会場などで、いろんな国から来た人々と交流しました。
川合 私は去年、弁護士になったばかりで、高尾山の自然を守る活動に取り組んでいます。自然が好きで、温暖化問題にも関心があり、公害地球懇の代表団に参加させてもらいました。ベラセンターの入り口で日本のNGOとして訴えることを予定していたのですが、規制が厳しく、コペンハーゲン中心部で開かれていたクリマフォーラムの入り口で、「日本は(温室効果ガス)25%削減の約束を果たし、途上国支援を」と合計8回訴えました。
笠井 私は「パーティー(締約国)」の参加証を持っていたので、最初は全体会議にも出席できたのですが、最終盤は、政府代表団の入場人数さえ制限されてしまったなかで、「しんぶん赤旗」の取材団と一緒にプレスセンターで徹夜して、会議の行方を追いました。
川合 徹夜までして会議をフォローした国会議員は、世界でも笠井議員だけだったかもしれませんね。
笠井 そうですね。会場を歩いていて西アフリカのニジェール政府の代表団の人と言葉を交わすと、「大臣と会うか」ということになって環境相と砂漠化の問題で意見交換するとか、欧米政府やNGOとも、いろんな交流ができました。
川合 COP15では、何としても2013年以降の野心的な温暖化対策で合意してほしいと思っていましたが、それに至らなかったのは残念です。それでも、科学の世界に基づいて世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度以内に抑えるとか、不十分ながらも途上国支援とかで一定の合意ができ、今後の活動がいっそう重要になってくるなと思いました。私自身はデモに参加したりして、南米とか世界各地の人々と交流し、市民レベルの問題意識と取り組みは前進していると実感でき、そこと連携することが大事だなと思いました。
橋本 COP15は、なかなか複雑な結果になりましたが、これは、一度は通らなければならない過程ではないかと思います。地球は一つだけれど、歴史も文化も言葉も違う200近い国が集まって一つの方向を出すわけですから、容易ではありません。
その中で米国でさえ、低いとはいえ(温室効果ガス削減の)一定の目標を出し、中国も目標を示すということで、少しずつ前進したことは重要です。でも、このテンポで間に合うのかという問題も提起されたと思います。
笠井 COP15で確認された「コペンハーゲン合意」は、法的拘束力がないとか、削減目標の数字が示されなかったとか大きな問題点はあります。それでも、これまで京都議定書から離脱するとか、うちは削減目標の外だと言っていた国も含めて、世界のすべての国が温暖化問題に向き合う最初の出発点ができた。産みの苦しみの段階だという気がしますね。年末にメキシコで開かれるCOP16に向けて「いよいよ待ったなし」だと痛感します。
橋本 COP15の結果から、これまでの全会一致方式では効率的な合意形成はできないといった声が出ています。米国のオバマ大統領や中国の温家宝首相らが小さなテーブルを囲んで、直接手を入れて合意文をつくり、初めてスタートラインに立てた。しかし、大きな国が決めたから、それでいいということにならずに、どんな小さな国でも発言でき、それが会議の結果を左右するというのは重要だと思いました。
川合 COP15では「クライメート・ジャスティス」(温暖化問題での正義)という言葉を何度も聞いたのが新鮮でした。温暖化対策は、やはり世界の貧困の問題と結びついており、温室効果ガスをほとんど排出していない最貧国や社会的弱者が一番の被害者になる。さらに女性が、より大きな被害を受けるというんですね。
笠井 その点で、温暖化対策で先進国と途上国が「共通だが差異ある責任」を負っているという枠組み条約以降確認されてきた原則が、今後も貫かれるかどうか。何より温暖化に大きな責任を負う先進国が、率先して野心的に削減しつつ途上国を支援する。途上国は、従来の先進国とは違う削減しながらの経済発展に踏み出す。世界的な合意に向けて、このことがいよいよ大事になっていると思います。(つづく)