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2010年1月11日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

アドバイス 新成人


 今年の新成人(1989年生まれ)は約127万人。新成人ライフをエンジョイするための五つのアドバイスを紹介します。


選挙権

昨年成人した 藤家 桂さん(21)

願いを届ける道

 20歳になった新成人のみなさんには、選挙に行ってほしいと思います。夏には参院選があります。私たちの要求を実現してくれる候補者を当選させることができるのは私たちです。

 昨年9月、学費が払えず、北海道教育大学を中退しました。実家のある埼玉に戻り、バイトをしながら、4月から通信制の大学に通うつもりです。

 奨学金と月5万円の仕送りを受け、飲食店でバイトしながらの大学生活でした。北海道は時給が600円台と低く、どれだけ働いてもたまりません。冬に雪と寒さで体調をくずし、バイトができなくなりました。

 昨年6月、臨時教員の母が持病で倒れ、休業したことも追いうちをかけました。単位が足りず、奨学金が受けられなくなり、大学には学費の滞納者リストが張り出されて、大学生活を続けられなくなりました。

 昨年の衆院選は退学する直前でした。投票するだけではもったいなくて、日本共産党の候補者の運動員に志願しました。米軍への思いやり予算の一方で、1万円が払えずキャンプや研修旅行にいけない子どもがいることを伝え、貧困と格差をなくす共産党への支持を訴えました。

 お金がなくて、自分の行きたい道を選べない社会はおかしい。社会を変えていくのは私たちです。

悪質商法

悪質商法にくわしい 村千鶴子弁護士

いい人装い接近

 19歳と20歳は1日違うだけで責任の重さが全然違います。

 未成年だと親の承諾がなければ、契約の取り消しができます。20歳になったら未成年者としての保護はありません。途端に危険が増します。

 19歳ごろからアポイントメントセールスの電話がかかり始めます。未成年だとわかるとその場で契約させないで、20歳の誕生日を一緒に祝おうと約束し、ごちそうして契約させることもあります。

 最近は、デートや、年上のお兄さん、お姉さんを装う手口が広がっています。「さみしいとき、つらいときは何でも相談にのるよ」と居心地のいい人間関係をつくって、くいものにするやり方です。

 「いいバイトがあるよ」と誘って、商品を友人や知人に売りつけさせるマルチ商法も広がっています。

 人間関係と契約関係を混同してはいけません。維持しようと思ったら、お金が必要だという関係はニセモノです。

 「そんなに高いものは買えません」という断り方ではダメです。「月いくらなら払える?」とローンを組まされます。

 はっきり「いりません」と断ることが大事です。法律でそれ以上勧誘することは禁止されています。

 しつこい勧誘など困ったこと、不安なことがあったら、自治体の消費生活センターに相談してください。

お酒

最低2日休肝日

 「酒は百薬の長」といいますが、逆に「酒は百毒の長」「酒は諸悪のもと」ということわざもあります。

 お酒を楽しむためにも、アルコールが身体にどんな作用を及ぼすか知ることが大切です。

 まず「酔う」とは、アルコールが脳の中枢神経をまひさせる状態をさします。

 アルコールは胃と小腸で吸収され、血液に溶け込みます。大半が肝臓で分解されますが、分解には時間がかかります。そのため、飲酒量が増えると、血液中のアルコール濃度が増え、脳のまひが広がり、酔いがすすみます。ほろ酔いから酩酊(めいてい)、泥酔、昏睡(こんすい)といった具合です。

 短時間に大量飲酒するイッキ飲みでは、急激に血中アルコール濃度があがります。脳全体がまひし、呼吸困難となって、死亡することもあります。

 また、繰り返しの飲酒は、自分で酒をコントロールできないアルコール依存症という「心の病」を引き起こします。

 「適度な飲酒」の目安は、個人差はありますが、1日アルコール約20グラム。ビールなら中ビン1本、日本酒なら1合程度といわれています。依存症にならないためにも、週最低でも2回は「休肝日」を設けるべきでしょう。

たばこ

若年ほど悪影響

 たばこによる健康被害は深刻です。

 喫煙は、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中など循環器系疾患やがん、消化器系の疾患の発生率を高めます。

 喫煙者が肺がんで死亡する危険性は、喫煙しない人の4・5倍。喉頭(こうとう)がんは32・5倍、口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)がん3倍などの研究結果が報告されています。

 とくに喫煙開始年齢が若いほど肺がんなどにかかる危険は大きくなります。そのほか、妊娠、出産にも悪影響を及ぼします。

 世界保健機関(WHO)が2008年にまとめた報告書では、1年間にたばこが原因でなくなった人は、500万人以上になるといいます。

 05年には、たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約が発効しました。これは、喫煙による健康被害から、現在と将来の世代を保護するのが目的。とくに未成年者、若年者の喫煙は世界的に大きな問題となっています。日本の成人喫煙率は男性で38・9%、女性で11・9%です。

年金

万が一に助かる

 大学生の太郎さんと、会社勤めの花子さんはもうすぐ20歳。太郎さんに、市役所から国民年金に加入するよう知らせが届きました。

 太郎 学生も20歳になったら国民年金に加入しないといけないんだね。花子にも知らせが届いた?

 花子 私は、入社したときに厚生年金保険に加入したわ。厚生年金保険に加入したら、20歳前でも国民年金に加入したことになるみたい。だから、20歳になっても加入手続きは必要ないそうよ。

 太郎 でもさ、年金なんてあと40年以上先の老後の話だろ。そのころ、年金がきちんともらえるか分からない。加入する意味があるのかなあ。

 花子 年金は老後のためだけじゃないそうよ。たとえば、病気やケガで体に重い障害を負ったら、障害の状態にある間、障害年金がもらえる場合があるんだってさ。

 太郎 若いころの“万が一”にも役立つ制度なんだね。でも、保険料を払えるかなあ。

 花子 低所得の学生向けに、保険料の支払いを猶予する制度(学生納付特例制度)があるそうよ。フリーターなど学生以外の20歳代にも同じような制度(若年者納付猶予制度)があるみたい。

 太郎 さっそく市役所に相談してみるよ。

 花子 年金制度には問題点も多いというわ。20歳になったら選挙権を持つのだから、私たちも年金制度にもっと関心をもって、将来も安心できる年金制度になるよう国に求めていきたいわね。


<新成人お役立ちダイヤル>

◇年金に関する相談

 「ねんきんダイヤル 0570(05)1165

◇商品勧誘などに関する相談

 消費者庁の消費者ホットライン 0570(064)370

◇解雇や労働条件に関する相談

 全労連・労働相談ホットライ 0120(378)060


お悩みHunter

不景気だから残業代は我慢?

  小さな菓子店に勤めています。お店は、不景気で売り上げが大きく落ち込み、残業代の支払いも滞りがちです。私は個人で加入できる労働組合に入っており、団体交渉を申し入れようかと考えました。でも、残業代を支払ったら本当につぶれてしまいそう。いまは、がまんするしかないでしょうか。(25歳、女性)

厳しい時こそ交渉で打開策を

  不景気で経営が厳しいときこそ、団体交渉などを通じて経営者と労働者が打開策を話し合うことが大事だと思います。

 売り上げが落ちていることは実感できても、店全体の経営がどうなっているかあなたは知っていますか?

 実際の売上高や収益、役員報酬やこれまでの余剰金の積み立てなど、経営の全体像についての資料を明らかにするよう団体交渉で求めてはどうでしょう。

 そのうえで、本当に残業代を支払えないのか、削減できる経費はないのか、考えるべきだと思います。

 労働組合を結成する権利や団体交渉をする権利を憲法と法が保障した趣旨は、労働者が使用者と対等な立場に立って、労働条件の改善に取り組めるようにするためです。

 健全な経営状態を保つことは、安心して生活できる労働条件の維持には不可欠です。経営や生産に関する事項も、労働条件に関係ある場合には、団体交渉の事項になります。

 また、経営者が、団体交渉に貸借対照表や損益計算書などの経理資料の提出をしないで納得できる説明もせず自己の回答に固執したような場合には、誠実交渉義務違反と判断した判例もあります。

 不景気だから権利行使をがまんするのではなく、厳しい状況を自ら切り開いていくための権利行使と知恵こそ、求められているのではないでしょうか。


弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所所属。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。


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