2010年1月5日(火)「しんぶん赤旗」
主張
2010日本経済
健全な発展への道を開こう
2009年は、日本経済に暗い影が落ちる中で、前向きの一歩を開いた年となりました。
世界の経済危機の影響は、特に日本に悲惨な被害をもたらしました。雇用は最悪の水準に急降下し、中小企業は存立の危機にさらされています。ほかの先進諸国と比べて経済成長率も一段と深い落ち込みを示しています。
ただし、多数の国民はだまってはいませんでした。苦難の大もとをつくった自公政権を、ついに退場に追い込みました。
「ルールなき」異常さ
半世紀以上続いた大企業中心、対米従属の自民党政治は日本経済を大きくゆがませました。財界とアメリカ言いなりに雇用と暮らしを痛めつけてきた結果、生み出したのは「ルールなき資本主義」という異常な実態です。
自公が「構造改革」の名で推進した雇用の規制緩和、社会保障の抑制や庶民増税は、もともと弱い暮らしの基盤をさらに破壊し、貧困と格差を急激に拡大しました。
その打開を求める国民のたたかいが、日本の政治を動かす大きな力となっています。新しい情勢の下で、国民の要求が一定の範囲内で実現する条件が開けました。
もっと進んで経済を本格的に立て直すためには、ゆがみの大もとにメスを入れる必要があります。財界・大企業中心、対米従属という「二つの異常」から抜け出し、雇用と暮らしを守る「ルールある経済社会」に転換することです。
長時間労働の規制、派遣労働者と正社員の均等待遇など欧州で実行されている制度も参考に、「正社員が当たり前」の社会に変えていく必要があります。国際労働機関(ILO)の解雇規制条約をはじめ、社会保障、教育、男女平等など国際的な到達点を日本の常識にしていく改革が求められます。
経済危機をきっかけに「資本主義の限界」が広く話題になり、資本主義のあり方そのものにも目が向けられています。
日本でもマルクスと『資本論』を主題にした本が次々発行されました。若者の読者が多いといいます。「なぜ利益が生まれるのか。8時間働いて、4時間分が自分の労働力分の給料で、残りの4時間で新しい価値を生み出しているんだよ、というメカニズムが分かったとき、これが今の若者には目から鱗(うろこ)なんです」。高校生に『資本論』を講義した元NHKキャスターの池上彰さんが雑誌で語っています。
池上さんの話は搾取率を100%とした場合の話ですが、「残りの4時間」分を「剰余価値」と言い、その増殖を資本主義的な生産は動機と目的にしています。だから大企業は大もうけしても正社員を減らして派遣を増やし、残った正社員には長時間労働を押し付けて賃金も抑えています。
今年を画期にしよう
10年で雇用者報酬は27兆円も減りました。先進国でこんな国は日本だけです。この間、大企業は5期連続で最高益を更新し、日本企業の内部留保は200兆円から400兆円に倍増しています。
自ら貧困をまん延させて内需を冷やす大企業を民主的に規制して横暴を抑えることは、国民の暮らしを守るとともに、大企業の健全な発展にもつながります。
連帯を広げ、今年を「ルールある経済社会」への道を開く画期にしていこうではありませんか。