2010年1月3日(日)「しんぶん赤旗」
主張
正念場の核問題
廃絶の交渉開始をいまこそ
5年に1度の核不拡散条約(NPT)再検討会議が、今年5月開かれます。「核兵器のない世界」を求める声が世界で高まっているいまこそ、核兵器廃絶の展望を現実の国際政治に開きたいものです。再検討会議を絶好の機会として、廃絶への世論と運動を大きく広げようではありませんか。
世界の圧倒的世論
今回の再検討会議を、核兵器廃絶への前進の場にすべきだとの世論は、世界の圧倒的多数を占めています。国連総会が昨年12月に採択した決議は、1995年と2000年に開かれた再検討会議の結果を踏まえ、「核のない世界」の目標に向かって前進するよう各国に求めています。
2000年の再検討会議で核保有国は廃絶への「明確な約束」を誓約しました。しかし、05年の前回会議は、核先制攻撃も辞さないとするブッシュ米前政権の妨害で議題さえ決められませんでした。
それから世界は変わっています。オバマ米大統領が昨年、「核兵器のない世界」を国家目標にすえると宣言したことで、核廃絶の世論に拍車がかかっています。今回こそ前進をという「新アジェンダ連合」提出の決議に、国連加盟192カ国のうち169カ国が賛成しました。反対は5カ国、棄権は5カ国にすぎません。
「核のない世界」の目標にどうやって到達するかが世界にとっての課題です。肝心なことは、核廃絶の国際交渉の開始です。
核廃絶を山の頂上にたとえて、到達するにはまず頂上が見えるところまで登らなければならないとし、廃絶の“条件づくり”が第一だという段階論も盛んです。米ロ戦略核の削減や核実験の全面禁止、兵器用核物質の生産禁止などでの前進を重視する立場です。
これら部分措置の重要性はいうまでもありません。しかし、それら一つ一つも難しい交渉であり、それに足をとられては頂上はいつまでも見えてきません。廃絶の条件という「最小限」の核兵器装備の考えも、核兵器の“有用性”を認めるものになりかねません。
こうした部分措置も、廃絶への過程に位置づけてこそ交渉の突破口が開かれます。廃絶の国際交渉を始めることを優先すべきです。
核不拡散条約は米、ロ、英、仏、中の5カ国に限って核兵器の保有を認め、他国には認めていません。保有国の核兵器自体、他国にとっての脅威です。保有国が核兵器を自国の安全を保障する「抑止力」とみなしながら、核兵器を開発しようという国の出現を抑えようというのは無理があります。「抑止力」とは、必要なら使用するぞという意思表明です。拡散の動きを根本的に止めるのも、核兵器廃絶の合意しかありません。
被爆国・日本の願い
非同盟諸国運動が昨年の国連総会に提出した決議は、全核保有国に核兵器を「できる限り早急に完全廃絶する」効果的措置をとるよう求めています。決議は111カ国の賛成で採択されました。廃絶を全体の合意にすることは可能であり、国際世論のゆくえにかかっています。
日本国民は、人類が核兵器とけっして共存できないことを知っています。広島・長崎への原爆投下から65年となる節目の今年、核兵器廃絶に確実に足を踏み出すことが被爆国・日本の願いです。
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