2010年1月1日(金)「しんぶん赤旗」
全組合員を直接雇用
徳島の光洋 偽装請負告発5年
トヨタ系列の部品メーカー、光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町)で1日から、JMIU(全日本金属情報機器労組)の組合員44人全員の直接雇用が実現しました。偽装請負を告発し、直接雇用を求めて立ち上がってから5年。“使い捨て労働”を許さない全国のたたかいと連帯し、不屈の団結で勝ち取った成果です。(酒井慎太郎)
「先に正社員になった組合員も一緒にたたかってくれ、うれしかった。みんなの力です」。こう話すのは、直接雇用の契約社員になる男性(31)。「正社員と同じ作業服になる」と照れます。
この職場に来て結婚し、長女は1歳。昨年、不況による減産で派遣や請負の労働者約200人が雇い止めされました。失業する不安がありました。「まだ通過点です。めざすは全員の正社員化ですから。組合でもっと頑張りたい」
今回、契約社員として直接雇用されたのは16人。直接雇用は2006年10月に始まり、これまで契約社員になったのは85人にのぼります。正社員にも07年末から毎年、登用させ、52人が採用。組合員の半数が正社員となっています。
ここに至るには、困難の連続でした。非正規の労働者は、正社員も嫌う最も過酷な現場で働いていました。年収は200万円前後と正社員の半分以下。正社員以上に働けなければ、部品を取り換えるように解雇されていました。
「オレより仕事をしていた人はいなかった。何の権利もなく差別されていた」。結成当時、勤続4年だった支部代表の矢部浩史さん(44)は振り返ります。
請負会社は法違反を繰り返し、後に業務停止命令を受けたコラボレート。現場は、光洋から独立して作業する請負とはほど遠い実態でした。作業指示はもちろん、請負会社の採用面接から解雇まで光洋が関与。明らかな偽装請負でした。矢部さんが「光洋に直接雇用する義務がある」と組合結成を呼びかけると、たちまち約20人が結集。04年に発足しました。
05年12月、徳島労働局に偽装請負を申告。請負会社は撤退し、解雇を通告してきました。申告に対する報復は許さないとたたかい、別の請負会社に雇用させました。
徳島労働局は偽装請負を認定しながら「適正な請負にする」として、直接雇用を指導しませんでした。これにも屈せず、全労連、日本共産党の国会質問など支援が広がるなか、06年8月、光洋は直接雇用することを約束し、JMIUと合意しました。
「団結ハチマキ」締め続けた
光洋は最初に53人を直接雇用したあと、それ以上雇用しようとしませんでした。まだの組合員からは、合意を実行させるしかないとわかっていても、「なぜオレはなれないのか」と不満がもれました。
「わしの責任だ。来年また頑張るから、辛抱してほしい」。組合員の前で頭を下げる矢部さんの姿に、脱退する組合員は1人もいませんでした。減産で残業が減り、生活保護基準を下回る低賃金に落ち込むなか、2人が生活保護を受け、職場にとどまりました。
今回の直接雇用も、2年前の春闘で約束させたものでした。全組合員が1年近く、「団結」のハチマキをしめて実施を迫りました。先に正社員になった組合員は一時金交渉の妥結を拒否してたたかいました。1年前に正社員登用された男性(29)は言いました。「最後の1人まで正社員にする。そのためなら、僕ら正社員は足踏みして待てばいい」
偽装請負などを告発し、直接雇用を求めるたたかいは、パナソニックやキヤノンなど全国に広がりました。組合の違いを超えて連帯し、労働者派遣法を改正させる大きなうねりをつくりだしています。
「労働組合の真価を発揮した成果です」と評価するのは、JMIU徳島地方本部の森口英昭委員長。「団結してたたかえば、どんな困難も乗り越え要求を勝ち取れることを示しています。雇用破壊とたたかう全国の労働者を励ますものです」
矢部さんは言います。
「性根を入れ、正社員登用を一歩ずつ実現していく。非正規労働者全体の待遇改善につながると信じ、頑張りたい」
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