2009年12月26日(土)「しんぶん赤旗」
初の鳩山予算をみる
“聖域”手つけず迷走
扶養控除やめ 消費増税示唆
記者座談会
鳩山内閣は25日、政権交代後はじめての予算編成となる2010年度政府予算案を閣議決定しました。その中身は、自民・公明政権を退場させた国民の願いにそったものになったのでしょうか。担当記者で話し合いました。
対照的な評価
A 鳩山予算の評価はどうだい。
B 生活保護の母子加算継続、児童扶養手当の父子家庭への支給、診療報酬の引き上げなど、国民が声をあげれば、不十分であっても前進すると実感できる面もある。
C これまで毎年2200億円の社会保障関係費の伸びを抑制してきた自民・公明政権時代の抑制路線は通用しない。
B ただ、「後期高齢者医療制度廃止を先送りなんて人をばかにしている」「子ども手当とひきかえに所得税・住民税の扶養控除を廃止しないで」と手厳しい意見も多い。
A 子ども手当の財源に地方負担を求めることは最後までもめた。地方も「地方自治と地方財政を守るためにこれをボイコットする」(松沢成文神奈川県知事)と批判が強い。政府は「地方負担は頭にない」(鳩山首相)といっていたからな。
C 対照的なのは財界の反応だ。御手洗冨士夫日本経団連会長は鳩山税制「改正」について、「エコカー減税の延長、それから研究開発減税も据え置いてもらったし、私は評価しています」と絶賛している。
A 財界の要望どおりというわけだ。一方で、「マニフェスト(政権公約)そのものに無理があった」とある財界幹部はいう。
混迷の末決着
B それにしても来年度予算案は決着までに混迷・迷走したな。
C 過去10年間の予算案はすべて24日に閣議決定されている。25日に閣議決定されたのは11年ぶりだ。税制「改正」大綱は遅れに遅れ、一時は越年予算編成もささやかれた。結局、小沢一郎民主党幹事長の「小沢裁定」でマニフェスト修正を決断して、一気に動きだした。
A マニフェスト絶対主義の破たんだ。なにせ概算要求段階で予算規模が約95兆円にまで膨れ上がった。景気低迷で税収も落ち込み、どうやってマニフェスト施策の財源を確保するかが迷走の始まりだった。
B その結果が借金(国債増発)と「埋蔵金」(税外収入)頼みの予算というわけか。
C 鳴り物入りで始まった行政刷新会議の「事業仕分け」でも、目標の3兆円には程遠い6000億円しかねん出できなかった。
A もともと「事業仕分け」自体、スーパー中枢港湾などの大型公共事業と軍事費は聖域にし、甘口の切り込みだった。逆にばっさり切り込んだのは暮らしや社会保障、中小企業関連の予算だった。科学予算削減への科学者の反発もすごかった。
B 税制「改正」でも大企業・大資産家減税は依然聖域だったな。大企業に大きな恩恵を与える研究開発減税の上乗せ措置は延長され、一部大資産家が巨額の減税を受ける証券優遇税制も温存された。
C 結局、予算案では、軍事費は微増とまさに「聖域」扱いされた。米軍再編関係経費は大幅増額だ。
A ゆきすぎた大企業・大資産家減税と軍事費という「二つの聖域」に手を付けないことが、混迷の大本だ。
自公と同じだ
B マニフェストの目玉だった子ども手当は、その財源として住民税の扶養控除の廃止が盛り込まれた。高校授業料「実質無償化」の財源は所得税・住民税の特定扶養控除縮小だ。これらは総選挙時の政策集ではやらないといっていた項目だ。
A 一方で、マニフェストに盛り込まれていた「後期高齢者医療制度の廃止」や中小企業向け減税は先送りだ。
B 政府税制調査会の司会を担当した峰崎直樹財務副大臣は24日の記者会見で「今後は国民に負担を求める選挙がくるし、またこなければならない」と明言した。
A 消費税増税をやるぞという宣言だな。税制「改正」大綱には「税制改革と社会保障制度改革とを一体的にとらえて、その改革を促進する」と書き込まれている。
C もともと民主党はマニフェストでも年金財源に消費税を充てるという考えだ。かつて自民党の小泉純一郎首相(当時)が「増税をしてもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくる」といっていたことを思い出すよ。
B 財源がないから消費税増税をというのでは、自民・公明政権と変わらない。消費税を増税して、大企業の税と社会保険料負担を軽くしようとしている財界の思うつぼだ。大企業と大資産家に応分の負担を求める国民の世論と運動が大切だな。