2009年12月22日(火)「しんぶん赤旗」
世界と日本 25回党大会決議案から
広がる平和共同体
中南米地域
この10年間に中南米地域では、新自由主義と対米従属を改める民主的変革が大陸全体に広がっています。変革を進める国々が増えるなか、国連憲章の諸原則に基づく平和共同体がこの地域でも発展しつつあります。
大陸を覆う変革の波
中南米地域は、19世紀初めから「米国の裏庭」とされ、米国の度重なる軍事介入や経済支配に苦しめられてきました。1970年代以降は、国際通貨基金(IMF)などを通じて、弱肉強食の新自由主義路線が導入され、その「実験場」とされました。
同路線のもとで、極端な規制緩和や民営化、福祉・教育予算の削減などが進められ、地域全体で貧困と格差が拡大。経済成長は停滞し、中南米では80年代は「失われた10年」、90年代は「絶望の10年」と呼ばれています。
こうした矛盾が限界に達するなか、1998年にベネズエラで革新勢力が大統領選で勝利したことを契機に、新自由主義を断ち切り、対米自立の外交を進める革新政権が次々と誕生しました。
この10年に変革への支持が強まり多くの国で革新政権が再選されているほか、今年3月には長らく親米政権が続いた中米エルサルバドルで革新候補が大統領に当選するなど、変革の波は大陸全体を覆う形で広がっています。
今では、革新政権の国々に住む人の数は、中南米地域の全人口の半数を大きく上回るまでになっています。
米国抜きの地域統合
米国は、1948年発足の米州機構(OAS)を中南米支配の道具として活用してきました。しかし、中南米諸国が対米自立を強めるなか、OASに大きな変化が起きています。
今年6月のOAS総会では、革命後のキューバを排除した過去の決議を無効にする新決議が、中南米諸国の一致した要求によって、米国も含めて全会一致で採択されました。
いま中南米諸国は米国の影響を受けるOASに頼らず、米国抜きで中南米独自の地域統合を模索しています。その流れのなかで、2008年5月に誕生したのが、南米12カ国でつくる平和共同体「南米諸国連合」(UNASUR)です。設立条約は、主権平等に基づく多極世界、核兵器のない世界を目標とし、統合の原則に、主権尊重、領土保全、民族自決権などを挙げました。
さらに中南米カリブ海諸国の全33カ国でつくる「中南米・カリブ海諸国機構」を来年にも立ち上げる議論が進んでいます。同機構発足に向けた首脳会議の宣言は、紛争の平和解決など国連憲章の諸原則の尊重を強調しています。
中南米の地域統合の動きは、米州全体で力関係が大きく変わり、「米国の裏庭」だった地域が自主的な平和の地域に変わり始めていることを示しています。
紛争解決へ力を発揮
中南米の平和共同体は、域内の問題を外国の干渉を受けずに自主的に解決するために現実に力を発揮しつつあります。
2008年3月、親米国コロンビアの政府軍が隣国エクアドルに越境攻撃する事件が発生。この時、リオグループ(中南米23カ国で構成)は直ちに首脳会議を開き、平和解決を目指す宣言を採択し、解決に道を開きました。紛争の平和解決という姿勢は、UNASURに引き継がれています。
今年8月には、パラグアイとボリビアが、両国に隣接するアルゼンチンの仲介で、74年ぶりに国境紛争を解決しました。3カ国は、自主的な地域統合を進めて相互信頼を強めたことが解決の背景にあるとして、統合の促進を確認しました。
コロンビアは10月末、同国内の基地使用を米軍に認める協定を米政府と結びました。UNASURは、協定締結前からこれを地域全体の問題として取り上げて議論。8月末の首脳会議は「南米を平和地域として強化」し、「外国軍の存在が…域内の平和と安定を脅かしてはならない」とする首脳宣言を採択しました。
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