2009年12月22日(火)「しんぶん赤旗」
米軍新基地問題
「年内決着」阻んだ 世論の力
米の圧力はねかえす“起動力”に
米軍普天間基地の「移設」問題で、「移設先」を当面決めず、与党3党で協議することを決めた鳩山政権。「移設先探し」のもとで、民主党内でも混迷は続いています。
同党の中堅議員は険しい表情で語ります。
「『移設先を探す』といっても、その答えは見つからず、堂々巡りだ。そうなれば、(米軍に)普天間に居座られる。かといって、出て行ってもらうには、ものすごい力と時間が要る。長引けば民主党政権にとって非常に厳しい」
「年内決着」を許さなかった力は、「普天間基地の即時閉鎖・撤去」「新基地建設と県内移設に反対」という沖縄県民、国民の世論でした。
沖縄選出の民主党議員のひとりはいいます。
「今はとにかく、(新基地建設圧力を)沖縄の住民パワーではね返すしかない。来年1月の名護市長選挙も非常に重要だ」
現行計画に批判的な別の議員も、「鳩山政権が、既定の路線をひっくり返すには、世論を力にするしかない。そのためには民主党として基地問題をどうするか、しっかりと議論する必要があるし、それを進めるには政権が一定の方向を出さなければダメだ」と語ります。
しかし、民主党が世論とともに、普天間問題にしっかり向き合っているわけではありません。
今月上旬には、沖縄選出の民主党議員が「県外・国外移設を求める署名」を、同党所属議員に呼びかけました。「1日足らずで想像を超える50筆以上が集まった」といいますが、この署名も「政権の足を引っぱっていると見られかねない」(同党関係者)として、即日「中断」となりました。「政策決定一元化」で、党内の政策論議が“封印”された現状のもと、一部議員を除けば、「普天間問題に関する党内論議はほとんど空白」(同党関係者)のままです。
ある元政府高官は、こういいます。
「いまが米国追随をやめるチャンスだが、ここで押し切られるとまた続くことになる。はね返すよりどころは沖縄の民意だ。米側がそれを無視して推し進められないものを持つ必要がある」
日本のマスメディアが「日米同盟の危機」をあおりたて「日米合意の履行」を迫るなか、政治を前に進める起動力は、新しい政治を求める国民の世論にあります。(中祖寅一)