2009年12月22日(火)「しんぶん赤旗」
主張
景気悪化
雇用と家計を立て直してこそ
年末を迎え、相次いで発表された政府統計が改めて日本経済のぜい弱さを浮き彫りにしています。
景気が再び急降下する「景気の二番底」への懸念も広がっています。雇用と家計の立て直しが急がれます。
大きな落ち込みが
政府は9日、先月発表した7〜9月期のGDP(国内総生産)の速報値を大幅に下方修正しました。それによると、プラスだった設備投資がマイナスに修正され、国内需要全体としてもプラスからマイナスへと一転しました。輸出(年率28・6%増)への依存がいっそう鮮明になっています。
より実感に近い名目GDPはマイナス3・9%(年率)という厳しさです。名目の雇用者報酬は6期連続のマイナスで253兆円と、ついに1992年の水準まで落ち込みました。雇用者報酬が下降を始める前の97年と比べると26兆円も減っています。
現場の実感を反映する景気ウオッチャー調査(8日発表)によると、いま現在の景気も先行きも、かつてなく急速な落ち込みを示しています。国民は景気の悪化を肌で感じています。
景気の悪化によってますます深刻になっている雇用と中小企業の危機打開に、政府が全力をあげることが当面のもっとも切迫した課題です。さらに、日本経済を立て直し、健全な発展を図るためには、より根本的な問題の解決に踏み出す必要があります。
日本や欧米で行われている自動車会社に対する支援策など、各国の景気対策によって輸出大企業の生産は持ち直しています。しかし、支援策頼みでは先行きの見通しが立たず、国内の投資を増やして生産設備を拡充するところにさえなかなか進みません。大企業応援の景気対策の限界です。
日本の自動車などの最大の消費国となってきたアメリカは、オバマ大統領自身がアメリカの消費の限界を指摘し、輸出に重点を置く経済戦略を表明しています。経済危機以前のような対米輸出の回復は不可能であり、もはや輸出依存のやり方は成り立ちません。
何より、大企業を応援して輸出でもうけさせれば、やがて家計にも利益が波及するという旧来の経済路線そのものが破たんしています。大企業がいくら利益を増やしても賃金は増えず、17年前の水準に落ち込んでしまったという事実がはっきり証明しています。
企業の利益が増えても労働者の賃金が増えない大もとは、労働法制の規制緩和による非正規雇用の拡大です。正規雇用を減らす一方で、非正規雇用は雇用全体の3分の1にまで拡大し、賃金水準を押し下げています。
規制緩和路線と決別し
大手製造業は政府の景気対策による生産の増加を、再び不安定雇用の増加で賄おうとしています。首都にまで「派遣村」を出現させ、大きな社会問題になった大手製造業の「非正規切り」が、またもや再現されようとしています。こんなことを繰り返していては、日本経済は衰退の一途です。
貧困を広げ、家計の回復を妨げている労働法制の規制緩和路線と決別することです。最低賃金を大幅に引き上げ、労働者派遣法の抜本改正など規制強化に転換して、「雇用は正社員が当たり前の社会」をめざすことが重要です。