2009年12月21日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
「化石」と「人の営み」
恐竜 ジオパーク
ユネスコが支援するジオパークネットワークが日本でも本格的にスタートしました。ジオ(GEO)とは地球、大地の意。地質学的に貴重な地層・地形・火山・断層を人々の営みとともに自然公園として保護し、学術・教育や地域おこしに活用する取り組みです。地殼変動でできた日本列島は地質遺産の宝庫です。日本ジオパークに認定された、恐竜渓谷ふくい勝山(福井県)と、恐竜と化石の島、天草御所浦(熊本県)を紹介します。
国内最大の発掘地
福井・勝山
福井県の勝山市に入ると、道路沿いには恐竜のモニュメント。国内最大の恐竜化石発掘地と恐竜博物館を目玉に、同市の全域が10月末、「恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク」として認定されました。
山々に囲まれた人口2万7000人弱の田園都市の市街地は、県下最大河川の九頭竜川の河岸段丘に位置し、街を歩くと、段丘崖(がい)に石垣を築いた長い「七里壁」が見られます。江戸時代には、この石垣を境に、上は武家屋敷、下は商人や庶民が住む城下町がありました。
恐竜化石が相次いで発掘されているのは手取層群(1億数千万年前)という中生代の地層です。石川、富山、岐阜の各県にも分布しますが、特に勝山市の河川堆積(たいせき)物の地層からの産出は全国の約8割を占めます。
日本の恐竜研究の最先端をいく福井県立恐竜博物館に展示された骨や足跡、復元された全身骨格などが見る人の想像力をかきたてます。新たに発見された小型獣脚類の骨化石から復元作業を進めており、後藤道治・主任研究員は「復元を通して新種の姿が明らかになることが期待される」と意欲を示します。
勝山市は、地元の恐竜研究会やNPOとも協力し、地質遺産をめぐるジオツアーの研究や地元ガイドの養成などを進めていく方針。水上実喜夫・未来創造課長は「大勢の人に見てもらえるよう、啓発と環境整備が今後の課題です」と話します。
地道な調査・研究から、大陸と陸続きだった恐竜時代の北陸地方の姿が浮かび上がっています。博物館の「手取層群の恐竜」によると―
この地方には広い盆地が存在し、大陸内部から大きな河川が流れ込んでいました。大陸にあって日本列島にはない岩石や、流れの方向などが地層から確認されています。ソテツ、イチョウ、シダなどの森林とともに、盆地の中には湖沼が散在。河川の近辺では、草食恐竜の群が移動し、肉食恐竜が獲物を追って散策していた―と推測しています。(福井県・山内巧)
島ごと博物館
天草御所浦
天草市立御所浦白亜紀資料館学芸員 鵜飼宏明さん語る
1997年に島から恐竜化石が見つかり、御所浦町(当時)は全島博物館構想を策定しました。いま「恐竜の島・化石の島」と呼ばれています。島まるごと博物館というのはジオパークの考え方と同じですよね。白亜紀資料館の活動も評価されたと喜んでいます。
この島に来ていただいたら、化石を見るだけでなくぜひ採集してください。資料館から5分の所で化石を発掘できます。
アンモナイト化石層がある前島など、島々の至る所で自然の中にある化石を見ることができます。地層のなかの化石観察が御所浦の特徴ですね。
海からは、1億年前の地層からなる「白亜紀の壁」と呼ばれる高さ200メートルの崖(がけ)が見えます。牧島には直径が60センチの巨大なアンモナイト化石が、地層に埋まったままの状態で保存されています。
資料館では、島で発掘された日本最大級の肉食恐竜の歯や草食恐竜イグアノドン類の骨を展示しています。新たな肉食恐竜の発見にも力を入れているところです。
御所浦の近くには、同じく認定された阿蘇や世界ジオパーク認定の島原半島もあります。あわせてめぐるジオツアーの企画ができたらいいなと関係者とも話し合っているところです。島の頂上(烏峠)では、九州を含む日本列島の成り立ちを垣間見ることができるのも魅力です。
天草市御所浦町 大小18の島からなる漁業の町。06年合併し天草市に。1億年前、8500万年前、5000万年前の地層と化石が観察しやすく、「日本の地質百選」に選ばれています。恐竜オブジェいっぱいの島で、資料館は小学校への出前授業もしています。学術、教育、島おこしの一翼をにないます。
ジオパーク
04年に世界ジオパークネットワークが設立され、現在64カ所が加盟しています。日本では今年8月、洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島が認定されました。10月末に山陰海岸の加盟申請を決定。日本ジオパークとして(1)恐竜渓谷ふくい勝山(2)隠岐(3)阿蘇(4)天草御所浦―を選びました。加盟(認定)準備を進める地域が増えています。
恐竜化石発見現在16道県で
国内で恐竜化石が発見されたのは1978年。日本での発掘は望み薄といわれたこともありましたが、ここ十数年に新発見が相次ぎ、現在16道県で見つかっています。化石が見つかる地層は2億5000万年〜6550万年前の中生代の地層が地表近くにあらわれているところです。最初の発見は岩手県、発掘が多いのは福井県、石川県、熊本県など。