2009年12月20日(日)「しんぶん赤旗」
小沢氏第1秘書初公判
「天の声」が生んだ偽装献金
業者震える支配力 裏付け
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「天の声」による圧力を使って巨額献金を要求―。西松建設違法献金事件で政治資金規正法違反に問われた民主党・小沢一郎幹事長の公設第1秘書の初公判(18日、東京地裁)は、公共工事を舞台にした小沢氏流の“錬金術”を浮き彫りにしました。西松建設元幹部や地元建設業者も、本紙の取材に小沢氏について、「震え上がるほどの影響力」だと、小沢氏抜きに「天の声」はありえないと証言します。(「政治とカネ」取材班)
“直々に報告したはず”
「ダミー(隠れみの)団体の献金が西松建設からのものだと、認識していないはずがない。献金の枠組みはウチの担当者と小沢事務所で考えてつくったものなんだから」
西松建設の元中枢幹部は、本紙の取材にこう答えていました。
初公判の検察側冒頭陳述は、こうした証言を裏付けました。
―公設第1秘書の大久保隆規被告は西松建設本社を訪ね、同社総務部長に年間1500万円の寄付を依頼。
―小沢氏側の受け皿団体のどれに、いくら献金をするか、小沢事務所作成の一覧表で打ち合わせ。
―打ち合わせで総務部長は「上と相談します」「社内で検討してみます」と、ダミー団体の献金が上司の決裁で決まることを大久保被告に伝えていた。
―小沢事務所が大久保被告に送ったメモに「西松で1300→内訳 新政治問題研究会、未来産業研究会→陸山会600、民主第4総支部400、民主岩手県連300」と記載―などと指摘しました。
今回、政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪に問われた、西松建設の名義を隠す献金の手法は、そもそも小沢氏側の要請によるものでした。
初公判では「小沢氏側から『名義を分けてほしい』といわれ、二つのダミー団体をつくった」という同社の国沢幹雄元社長の調書が紹介されました。
小沢氏側が分散化を望んだ理由。それは「かつて小沢議員側にゼネコンからの多額の献金が問題とされ、小沢議員側は癒着を強く否定してきた」(検察側冒頭陳述)という経過があったためでした。
小沢氏側が、ゼネコン各社から7年間で集めた金は約6億円に上ります。こうしたカネは、分散化や下請け会社からの献金という形でゼネコン業界との癒着を隠してきました。
同社の元中枢幹部は「献金は盆と暮れ、定期的にしていた。大久保さんは小沢先生に報告せにゃならんから、どこの献金か整備し、把握していた。直々に報告していたはず」といいます。
「小沢事務所ににらまれたら、受注仲間に入れてもらえない」
“献金は受注への保険”
初公判で浮かび上がったのは、小沢事務所の「天の声」を背景にした“ゼネコン支配”の構図です。
小沢事務所は、ダミー団体とは別に、西松建設が組織した下請け企業20社でつくる「松和会」を、直接「陸山会」の会員にし、1社各50万円の献金をさせていました。
公判では、大久保被告が、他のゼネコンにたいしても同様の方法で、1000万円ほどの献金増額を迫る様子がのべられました。
―ある業者さんは、協力会社20社ほどを自由党の(岩手県)第4総支部(当時、のち民主党)に入会してもらっているんですよ。1社平均50万円くらい出してもらっています。協力してもらえませんか。
西松建設の元中枢幹部が「震え上がるほどの影響力があった」と本紙に語った小沢氏の“威光”のもと、下請け業者らはこぞって献金に協力。小沢氏が代表の第4総支部の献金は大半が公共工事の受注企業が占めました。同支部の政治資金収支報告書には、献金をした会社名が100社以上並びました。
その一つ、奥州市の元建設会社社長は、「下請けの規模によって、だいたいAランクの業者は50万円割り振られた」と話します。「小沢事務所ににらまれたら公共工事受注の仲間に入れてもらえなくなるんです。献金は受注のための保険でした」
小沢氏の選挙では、ゼネコンは小沢氏の地元選挙事務所に人を出し、地元業者らも「一建会」をつくり小沢氏の集票活動にフル回転しました。
小沢氏が初出馬のころから支援している奥州市の建設会社社長は、10年以上前に小沢氏本人が語った言葉を忘れられません。
「何がありがたいといって、一番は業者のみなさんですよ。お金だけじゃなく、票をとってくれる」
公共工事という「餌」でカネを集める小沢氏側のやり方は、自民党流そのもので、小沢氏が公共工事をカネの力でゆがめた責任は重大です。