2009年12月17日(木)「しんぶん赤旗」
主張
普天間基地撤去
「移設先」探しはもうやめよう
政府は15日、アメリカなどが「年内」を主張していた米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設先」の決定を延期して連立3党での協議を続けることを決め、ルース駐日米大使にも伝えました。
日本共産党の志位和夫委員長は前日、鳩山由紀夫首相と会談し、「県外、国外移設」の首相の公約を実現するには、「移設条件付き返還」の立場から抜け出す必要があると指摘したばかりです。「移設先」探しは各地で反発を買い、問題を解決できないのはいまや明白です。「移設条件付き返還」の方針を見直し、普天間基地の無条件撤去の立場で米と交渉すべきです。
たらい回しで解決しない
鳩山首相は、普天間基地の撤去を求める「沖縄県民の思い」と、名護市辺野古に新基地を建設する「日米合意」との「両方を生かせるようにと思いながら、どう解決するか悩んでいる」とのべました。しかし、基地で苦痛を強いられる県民と、県民に苦痛を与える「日米合意」とを同列に扱うこと自体が間違いです。県民の安全や暮らしを考えるなら、県民の願いを最優先すべきです。
普天間基地は人口約9万人の宜野湾市のど真ん中を占拠し、ヘリや輸送機などが早朝から真夜中まで飛び回り、爆音被害と墜落の危険を与えています。世界一危険な普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去は待ったなしの課題であり、これこそ首相がやるべき仕事です。
自民党政権以来、長年にわたって政府は、普天間基地に代わる新たな「移設先」を探さなければ撤去できないとの立場に固執してきました。普天間基地を存続させるのと同様、「移設先」を探すというのも、耐え難い苦しみを国民に押し付け続けることです。
しかも「移設」を口実にした新基地建設で米軍が狙うのは、世界戦略を遂行するための最新鋭の基地づくりです。垂直離着陸もできるオスプレイ輸送機を新たに配備するなど、爆音被害や墜落の危険も大きくなるのは目にみえています。沖縄「県内」であれ「県外」であれ、こうした苦しみを「たらい回し」しようとすれば、反発を買うのは当たり前です。
実際、普天間基地の「移設条件付き返還」をきめた1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意いらい13年たちますが、国民・県民の反対で、政府は辺野古での新基地建設のため杭(くい)一本打つこともできません。「移設条件付き返還」はいまや破たんしているのです。このまま「移設先」探しを続ければ、普天間基地の撤去が遅れ、市民をいつまでも苦しめる結果となることは明らかです。
無条件撤去の交渉を
普天間基地の問題を解決するには「移設条件付き返還」の立場を抜け出し、無条件撤去を求めて米側と本腰を入れた交渉を行う以外にありません。
鳩山首相は「日米合意も大切だ」といいます。しかし、県民より大切な「日米合意」があるのか。だいたい自公政権から民主党政権に政権が代わった以上、政策的な合意の見直しは当然です。
日米安保条約は、アメリカが基地の使用を「許される」(6条)とうたっているだけで、日本が同意しない基地をおけるわけではありません。普天間基地の無条件撤去を要求するのは、安保条約に照らしても日本の当然の権利です。