2009年12月16日(水)「しんぶん赤旗」
県民の力で「年内決着」見送り
「移設付き返還」抜け出せず
普天間問題「政府方針」
「沖縄も大切、アメリカも大切」。こう言い続けてきた鳩山由紀夫首相は15日、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設」問題で、「結論先送り」を決定しました。今後、「来年5月」を軸に結論の時期をめぐる与党内の攻防が始まります。
もともと首相は普天間基地の「県外・国外」移設を公約していましたが、米側は強硬に現行計画=名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部への新基地建設を要求。10月に来日したゲーツ米国防長官が現行計画の「年内決着」を突きつけたことから、鳩山政権の混迷が始まりました。
岡田克也外相が今月5日、「日米同盟」絶対視の立場から沖縄県民の「説得」にかかりましたが、逆に猛反発を受けるはめに。沖縄県選出の与党議員からは離党の動きすら見え始め、鳩山政権はもはや身動きが取れなくなりました。
米側が求める「年内決着」を許さなかったのは県民の力によるものです。宜野湾市の伊波洋一市長は15日の記者会見で、「私たちは普天間基地の県内移設ではなく、国外移転を主張してきた」と述べ、今後、与党内に設置される小委員会に要求を突きつけていく姿勢を示しました。
しかし、鳩山政権には、県民の多数がもとめる普天間の無条件撤去の立場はなく、「移設条件付き返還」から一歩も抜け出していません。
北沢俊美防衛相は15日の会見で新しい「移設先」の検討を表明しましたが、辺野古への新基地建設を決めた2006年5月の在日米軍再編合意について、「基本線は崩さない」と述べています。
現に、辺野古への新基地建設に関する来年度予算は予定通り計上し、環境影響評価(アセスメント)の手続きも継続する方針です。これでは、米軍基地の「県内たらい回し」を決めた日米合意にしばられた協議に終始しかねません。
沖縄タイムスが47都道府県に海兵隊移転の是非をアンケートしたところ、受け入れを表明した知事はゼロでした(13日付)。海外への“殴り込み部隊”である海兵隊を歓迎する自治体はどこにもなく、「県外」移設に展望はありません。「移設条件付き返還」から抜け出さない限り、沖縄の基地問題が解決しないことは、この13年間の歴史が証明しています。(竹下岳)