2009年12月15日(火)「しんぶん赤旗」
主張
中南米
前進する民主的変革のうねり
中南米では、国民が主人公の新しい政治を実現する変革のうねりが着実に前進しています。世界的な金融・経済危機のもとでも、変革を推進する諸政権は貧困解消などに一段と力を入れ、国民の支持を広げています。
進む貧困対策
ボリビアでは先住民初の大統領であるモラレス氏が、今月行われた大統領選挙で2005年の初当選時を上回る6割の支持を得て再選されました。貧富の格差が世界でも激しいボリビアで、モラレス政権は圧倒的多数を占める貧困層の生活向上や教育に力を入れてきました。2年以上にわたった識字運動で非識字問題を克服し、さらに教育を受ける機会がなかった国民向けに無償の初等教育を全国で展開しています。
貧困対策の財源には、モラレス政権が国有化した天然ガス資源が利用されています。民営だった03年、英系メジャーが天然ガスを不当な安価で米国に輸出しようとしました。多国籍企業の横暴への国民の反発が、同政権の誕生につながりました。
中南米では1980年代以降、米国や国際通貨基金(IMF)、多国籍企業などが押し付けた弱肉強食の新自由主義が吹き荒れました。「構造調整」の名で、一部の富裕層や多国籍企業を利する無秩序な自由化や大衆課税の強化などが強行され、大多数の国民にとって生活はいっそう困難になりました。国民の運動を基礎に、事態を転換し、国民生活の向上をめざす政権が次々に誕生しました。
今年、ボリビアのほかエクアドルでも大統領が再選されました。ウルグアイの大統領選挙では変革を進めてきた共産党や社会党がつくる「拡大戦線」の政権が受け継がれ、エルサルバドルでは民主政権が新たに誕生しました。
中南米諸国が米国に干渉をやめるよう強く求めていることも重要です。国際協調を掲げるオバマ米政権の誕生にあわせ、ブラジルなど中南米の首脳は米国に中南米との関係改善を求めました。米州首脳会議で中南米側は、米国言いなりと決別し、対等の関係を打ち立てる意思を強く表明しました。米国の中南米支配の道具だった米州機構(OAS)が、米国も含む全会一致で過去のキューバ排除決議を無効にしたことは画期的な出来事でした。
米国は対中南米政策の根本的転換を迫られています。しかしオバマ政権は、対キューバ経済封鎖の解除になお踏み出していません。
ホンジュラスで、貧困対策を進めた大統領を特権層が追放した軍事クーデターについて、米国がその既成事実化に手を貸していることも問題です。クーデター派は正統大統領の復帰を拒否したまま、弾圧下で次期大統領「選挙」を強行しました。
オバマ政権は当初、クーデター非難の国際世論に同調しました。しかしいまは、「広範な国民が民主的意思を表明した」(クリントン国務長官)と「選挙」を歓迎しています。
民主主義を基礎に
ブラジルをはじめ中南米の進歩政権はクーデターを厳しく批判し、その正当化を認めていません。これらの政権は選挙で多数の支持を得ながら民主的変革を進めているからです。一部に逆流があっても、進歩の流れは中南米の歴史を変える前進を遂げています。