2009年12月12日(土)「しんぶん赤旗」
米軍ヘリパッド反対「妨害行為でない」
国の排除請求却下
那覇地裁
沖縄県国頭郡東村の高江で日米両政府が計画する米軍ヘリコプターの着陸帯(ヘリパッド)の建設に反対する住民ら14人を相手に、沖縄防衛局が申し立てた通行妨害禁止仮処分に対する決定が11日、那覇地裁から出されました。決定は、住民団体の「ヘリパッドいらない住民の会」の共同代表2人を除く12人について国側が主張する「正当な表現活動を超えた違法な所有権侵害」には当たらないとする通行妨害禁止の申し立てを却下しました。
2人に不当決定
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共同代表の2人について「妨害行為」を認定しました。弁護団長の池宮城紀夫弁護士は「不当な決定」と批判しました。
決定は共同代表2人について、「自らまたはその意を通じた第三者をして妨害してはならない」と極めて限定的なものにとどめています。また4カ所のテントについても、2カ所を妨害行為に当たらないと却下。残りの2カ所も「所有関係が明らかではない」として撤去・排除を却下しました。
弁護団は共同代表2人の妨害行為認定は不当としながら、「住民運動の言論、表現活動を正当なものとして認定した。逆に国の申し立ての不当性を明らかにした決定であり、ヘリパッドいらないという住民の反対運動をこれまで通り続けることはなんら制限されない」としています。
妨害禁止の債務者にされた高江の住民の一人、清水暁さん(39)は「12人の排除却下は当然。しかし共同代表への排除命令は許されない。県民の世論を背景にヘリパッド計画の白紙撤回までたたかいたい」と語りました。
解説
国の申し立て 道理なし
緊急に司法判断を求めるのが仮処分申し立てです。昨年11月から1年以上経過しての決定は、国の申し立てに道理のないことを裁判所が示したといえます。
国側の申し立ては、米軍基地建設という国の行為に、住民が抗議するという主権者としての当然の行使に対する弾圧です。審尋の中で弁護団が強調したのもこの点でした。その意味で「沖縄防衛局職員らに対する説得、抗議などは、基地建設に反対する立場での政治的な信条に基づく行為である限り、一定限度のもとに許容され、尊重されなければならない」との裁判所の判断は当然です。
国側の「組織的、集団的な妨害」との主張は完全に否定されました。住民と弁護団が強調した住民の抗議、監視活動に対し、国が司法(裁判)という力で分断、切り崩そうとする強権的な手法の不当性を裁判所が事実上、認定した意義は重要です。「妨害行為」を理由に、住民運動を一網打尽に弾圧する国の意図は通じなかったといえます。共同代表2人への不当な決定に対し、弁護団は不服の手続きをとる方向です。
住民側は、「国の申し立ては自民・公明政権が仕掛けたもの。これを維持し、共同代表を妨害者とする決定を出した裁判所に強く抗議し、ヘリパッド建設工事のすみやかな中止を強く要求していく」とたたかいをいっそう強める構えです。(山本眞直)
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