2009年12月10日(木)「しんぶん赤旗」
主張
情報収集衛星
これこそ「廃止」すべき事業だ
宇宙から他国の動向を監視する政府の情報収集衛星「光学3号機」が、先月末打ち上げられました。寿命を迎えた「光学1号機」の後継機です。当面は光学衛星2機とレーダー衛星1機の「2組3機」体制ですが、政府は2011年に「レーダー3号機」を打ち上げ、「2組4機」体制とする予定です。
衛星を使って他国の内部を監視するのは重大な干渉行為です。しかもばく大な予算で国民生活予算を圧迫しています。予算を圧縮するといいながら「事業仕分け」の対象にもせず、「聖域」にしている政府の姿勢が問われます。
海外での軍事活動のため
情報収集衛星の実体は他国の軍事施設や軍隊の動向を把握する軍事偵察衛星です。1日1回、どこであろうと監視できます。
宇宙の軍事利用は、憲法の平和原則と、宇宙開発は「平和利用に限る」と明記した国会決議に違反しておりそもそも許されません。
政府の「専守防衛の範囲内」という説明も通用しません。「専守防衛」というなら、日本への侵略に対応するためといって巨費を使って整備した、レーダーなどによる監視システムで十分です。
偵察衛星保有は、イラク戦争支援などの自衛隊の「国際平和協力活動」に備えるのが狙いです。
軍事偵察衛星は他国で戦争するさいに、軍事施設や軍隊の動向をつかむために必要な装備です。米軍がアフガン戦争などで、偵察衛星の情報にもとづいて攻撃目標を設定し、砲爆撃していることをみても明らかです。
日本は憲法で戦争を放棄した国です。「国際的な安全保障環境を改善」することが日本を守ることになるといいながら、日本を侵略しようとしているわけでもない他国の軍事的動向に関心をもち、海外での軍事作戦に備えるのでは、諸国との友好関係を害することにもなりかねません。
軍事衛星は金食い虫です。情報収集衛星はほぼ5年ごとに更新するため年平均600億円〜700億円もかかります。開発を始めた2000年度以降の9年間で使った予算はすでに6000億円を超えています。「2組4機」体制の強行で犠牲にされるのは国民生活予算です。
政府は来年度予算の圧縮のために「事業仕分け」を行いました。4兆7000億円もの軍事費に切り込みもせず、内閣官房が所管する偵察衛星予算もそのままです。国民生活を守るというならこうしたムダこそなくすべきです。
もともと宇宙軍拡は、日米軍事一体化を狙う米国の要求と、宇宙を新たなもうけ口にしようとする財界・軍需産業の要求に応えるものです。1機で5000億円といわれる早期警戒衛星の開発・保有も狙われています。政府は軍需産業の利益優先をやめ、宇宙の平和と国民の暮らしを守るために宇宙軍拡路線を見直すべきです。
平和の流れに逆らうな
過去の侵略戦争を心から反省もせず、世界での有数な軍事大国となった日本が、軍事衛星を保有し各国の軍事的動向を監視する態勢を強めれば、アジアの軍事的緊張を高めることにしかなりません。
世界では東南アジア友好条約参加が大きく広がるなど、地域の平和共同体への前進がみられます。日本はこの平和の流れを加速する道を進むべきです。
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