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2009年12月9日(水)「しんぶん赤旗」

世界と日本 25回党大会決議案から

財界仕込みの「強権国家」づくり

民主党政権の「改革」案をみる


 「政府・与党の一元化」「官僚答弁の禁止」。民主党政権がいま「政治主導」の名でさまざまな方向を打ち出しています。これは、経済同友会という財界団体が2002年10月に発表した提言「首相のリーダーシップの確立と政策本位の政治の実現を求めて」という「二大政党づくり」の青写真を忠実に実行に移したものです。その中身をみてみると―。


「内閣と与党一元化」

首相権限強化へ「効率化」

 経済同友会の提言から「内閣と与党の一元化推進による首相のリーダーシップの確立」「与党政策責任者が閣僚を兼ね、内閣と与党の一元化を推進する」「大臣・副大臣・政務官がチームとして力を発揮するよう首相主導の組閣・人事を徹底する」

 「提言」の一つ目の特徴は、「内閣と与党の一元化」の名で、首相の権限強化を狙っていることです。

 民主党の小沢一郎幹事長がその具体化としてまず実施したのが、党の政策調査会や各部門会議を廃止し、大臣・副大臣・政務官の「政務三役」に政策決定の権限を移すことでした。民主党は衆参両院合わせ400人超の巨大与党になりましたが、民主党議員の中の一握りの議員が政府に入って政策決定し、与党は国会でこれを追認するだけ、ということになりかねません。

 一方、野党による行政監視機能も、小沢氏が主導する「国会改革」で大きく制限されようとしています。

 小沢氏は「国会改革」の柱に「官僚答弁禁止」や「常任委員会の定例日のあり方」「通年国会」などをあげます。小沢氏の16年前の著書『日本改造計画』でも「野党による…政府拘束の武器」によって「政府のリーダーシップが拘束されている」と述べ、これらを列挙。「審議を効率的に進めなければならない」として国会の会期制、定例日などの廃止を主張していました。政府提出法案を「効率的に」通すことが狙われているのです。

 しかも、官僚答弁の禁止は、国会の行政監督機能を大きく低下させます。とくに、内閣法制局長官の答弁禁止は、「政治主導」の名で「海外での武力行使」を否定してきた政府の憲法解釈を変えようという動きと結びついています。

 民主、社民、国民新の与党3党は、来年1月召集の通常国会冒頭に内閣法制局長官の答弁禁止などを盛り込んだ国会法改定案を提出し、「(野党と)どうしてもまとまらないときは、最終的には多数決で決める以外にない」(小沢氏)と強行する構えをみせています。

「マニフェスト選挙」

総選挙の後は白紙委任

 経済同友会の提言から「政策本位の政治を実現する政治改革」「各政党が、詳細な数値目標、達成時期、具体的な財政的裏付け等を明示した政権政策(マニフェスト)を党の方針として世に問い、選挙に勝った政党が政権政策を実行する。その後政権政党が次回選挙までに政策を自己評価するとともに、有権者は現政権の業績評価を行い、同じ政権を継続させるか、政権を交代させるかの意思決定をするという政治のサイクルを確立することが必要である」

 「提言」の二つ目の特徴は、主権者である国民がその意思を国政に反映する機会を総選挙だけにしていることです。「マニフェスト」はそのための手段と位置づけられています。

 この「提言」と同じ考えを表明しているのが、小沢幹事長を団長に民主党が9月に実施したイギリス調査の報告書です。

 そこではイギリスの「マニフェスト選挙」が機能していることを紹介し、日本の選挙を「本来、主権者たる国民が主権を行使する唯一の機会」とし、有権者の意思表明を選挙だけに限る考えが表明されています。これは小沢氏の持論で、同氏は繰り返し「民主主義というのは選挙。それが原点。国民、主権者が主権を行使するのは唯一選挙の機会だけ」(10月7日の記者会見)といいます。

 民主党は「提言」を受けた03年総選挙から「自民党も正々堂々『マニフェスト選挙』を戦ってほしい」と打ち出すなど、それ自体を選挙戦の最大の対決軸にしてきました。

 しかし、有権者は同党の政策と路線に丸ごと白紙委任をあたえたわけではありません。今回の総選挙でも、民主党大勝の要因について「政策への支持が大きな理由とは思わない」が52%(「朝日」9月1日付)にのぼり、個別政策でも反対が多数となる公約がありました。

 にもかかわらず、民主党政権は「マニフェスト」を「国民からの命令書」(長妻昭厚生労働相)などと称し、“マニフェスト絶対主義”ともいえる態度を示しました。

「単純小選挙区制」の提唱

民意ゆがめる害悪極端に

 経済同友会の提言から「真の政権交代を可能にする『単純小選挙区制』を導入する」「衆議院議員総選挙とはまさに政権を選択する選挙となるべきであり…次の首相候補及び閣僚候補を明確に示した上で選挙を戦うことが求められる。…『単純小選挙区制』による総選挙は、首相公選的要素を持った政権選択の選挙となる」

 「提言」の三つ目の特徴は、総選挙の役割を「政権の選択」「次の首相選挙」に矮小(わいしょう)化し、その実現に最もふさわしい選挙制度として「単純小選挙区制」を提唱していることです。

 いま衆院の総定数は480議席です。このうち300議席は定数1の小選挙区で選び、180議席は全国を11に分けた比例ブロックで選びます(小選挙区比例代表並立制)。「単純小選挙区制」は、民意を正確に議席に反映する比例部分を全廃し、小選挙区制だけにするものです。

 民主党が先の総選挙マニフェストで掲げた「衆院比例定数の80削減」は、「単純小選挙区制」に向けた重大な一里塚です。80削減すれば、総定数に対する小選挙区の比重はいまの62・5%から75%になり、民意をゆがめる小選挙区制の害悪はいっそう極端なものとなるからです。

 実際、今回の総選挙結果で比例80削減の場合の議席を試算すると、民主、自民両党が小選挙区・比例あわせて92%もの議席を独占します。この結果は「二大政党」が国会を独占し、少数政党を締め出すことを裏付けています。

 鳩山由紀夫首相は、根っからの小選挙区制論者です。旧民主党の結党(1996年)以来、「定数は500から300の単純小選挙区にもっていくべきだ」と単純小選挙区制度導入を主張し続けています。

 岡田克也外相は民主党幹事長当時、「比例を中心にすると、結局、第三極が主導権を持つことになり、かえって民意はゆがめられる。ダイナミックに政権が代わるのは小選挙区中心の制度がいい」(2009年9月1日のNHK討論)と比例部分を敵視しています。


国会の役割と民意反映否定

 財界が描いた「二大政党づくり」の青写真を忠実に実行に移す民主党政権。そこで狙われているのは、強権的国家づくりです。

 総選挙で「マニフェスト」のもとにある政党を選んだら、次の総選挙までは政権を獲得した政党に「マニフェスト」実行を白紙委任。「効率的に」政府提出法案を通すため国会のあり方も変える――。そこには、主権者である国民の声にたえず耳を傾け、国会で審議を尽くすという民主主義のプロセスは存在しません。

 選挙は、「政権選択」と「次の首相」選びに矮小化され、多様な民意を代表する議員を選び、国会に民意を正確に反映するという原則は無視されてしまいます。

 しかも「政権選択」をしやすくするための「単純小選挙区制」導入となれば、民意はいっそう切り捨てられ、消費税増税反対の声も、憲法9条改定反対の声も、国民多数の声が国会に届かなくなってしまいます。

 全体に共通するのは、国会の権限と役割の否定、民意反映のプロセスの否定です。

 日本共産党は「財界の青写真にそってすすめられようとしている強権的国家づくりに強く反対する。日本国憲法に定められた国民主権、議会制民主主義の原則を擁護・発展させるために全力をつくす」(第25回党大会決議案)と表明しています。



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