2009年12月9日(水)「しんぶん赤旗」
主張
政府経済対策
肝心要に焦点が合っているか
鳩山内閣が第2次補正予算案に盛り込む経済対策を決めました。
与党で最大の焦点になったのは税金を何兆円つぎ込むかという対策の規模です。規模の大きさのアピールに腐心して効果の薄い浪費的な事業を詰め込んだ、自公政権の本末転倒のやり方と重なって見えてきます。
「デフレ」対策と言うが
大企業の景気が上向く一方で、多くの中小零細企業は存続の危機に立たされ、雇用・失業問題は一段と深刻になっています。
経済対策の柱となっているのは住宅版エコポイントの創設、家電エコポイントやエコカー補助の延長、電線地中化などの公共事業や信用保証制度の拡充です。
後期高齢者医療制度の存続を前提に負担軽減の継続を盛り込んでいますが、公約通りに制度そのものを速やかに廃止すべきです。
エコポイントなどは低所得層にはほとんど恩恵がありません。公共事業も地方の生活道路の整備や保育園をつくるなど、生活に密着した事業を優先すべきです。
中小零細企業への支援では信用保証制度の拡充は当然です。直ちに業種制限をなくすと同時に審査条件を緩和して利用しやすくする必要があります。休業補償・直接支援の実施も急がれます。
何より、失業給付を全国的に延長し、雇用保険の積立金も活用して失業者の生活支援を抜本強化することです。最低賃金引き上げも不可欠です。円高への対応としても、労働者や下請けにしわ寄せする大企業の横暴をやめさせることが決定的に重要です。
肝心の失業者や低所得層、中小零細企業にこそ手厚い支援が必要です。やれることはすぐ実行し、暮らしと営業を守る姿勢をはっきり国民に示すよう求めます。
先月、政府は「デフレ」(持続的な物価下落)を宣言しました。菅直人副総理・経済財政相はデフレの企業収益への悪影響を強調し、日銀による金融面の支援を期待すると語っています。
“困ったときの日銀頼み”では自公政権と変わりません。必要なのは経済のゆがみの根本にメスを入れることです。欧州などではデフレは起きていません。日欧の大きな違いは、日本では賃金が減り続けている上に、失業者などへの生活支援も決定的に弱いということです。
日本の1人当たりの賃金はリーマン・ショック以前からずっとマイナスです。非正規雇用が働く人の3分の1に広がり、大企業の「非正規切り」が横行しています。日本では失業者の77%が失業給付を受け取れませんが、ドイツでは6%、フランスでは20%にとどまっています。アメリカさえ59%と日本ほどひどくはありません。
所得が減って経済の6割を占める家計消費が冷え込み、モノやサービスがだぶついていることが、内需のバランスを大きく崩しています。焦点は大企業の利益でも、ましてや日銀の金融政策でもないことは明らかです。
旧来路線を転換して
打開の道は明確です。雇用と暮らしを犠牲に財界を応援する旧来の自公路線と決別し、雇用と暮らしを守るルールを確立する方向にかじを切ることです。
「旧来路線の転換が始まった」と国民が本当に実感できるなら、将来不安に凍りついた消費も少しずつ溶け始めるはずです。