2009年12月8日(火)「しんぶん赤旗」
保育制度改悪(下)
検討でみえた問題点
認可園の拡充こそ
直接契約方式
新制度では、自治体が保育を直接実施する責任がなくなり、利用者と保育所との契約が出発点とされています。
保育料も保育所が徴収する方向が示されています。保育所は、利用者から集める保育料と利用実績に応じた補助金で運営するため、経営がその時々の利用状況に左右され不安定になります。
保育料滞納への対応は、保育所と利用者にとって大きな問題となります。自治体が何らか関与することも検討されていますが、未納世帯の子が退所を迫られたり、未納につながりやすい低所得世帯が敬遠される事態が生まれる危険があります。
企業参入促す
待機児童解消をうたう新制度が目玉としているのは、保育サービスの量を確保するため、客観的な基準を満たした事業者はすべて参入を認めるという指定制度の導入です。これまでは都道府県が認可した保育所によって保育の質と安定性を保ってきましたが、新制度では、自由に事業者が参入でき、1カ月前に届けるなどで撤退も自由の仕組みになります。
保育所への補助金(運営費)の使い道も、現在は、その保育所の運営費用にあてることが原則とされ、制限されています。これを撤廃して、本社が利潤を回収したり、株主配当や他事業につぎ込むことを可能にしたりすることは、財界の強い要求でした。
新制度では、運営費の使途に一定の規制は必要としながらも、専門委員会で反対意見が多く出た株主配当の容認もふくめて、現状よりかなり緩和する方向で検討されています。
保育の質低下
厚労省は、「指定」は国が定める最低基準を満たすことが条件だとし、保育の質は下げないと繰り返し説明してきました。
しかし11月に長妻昭厚生労働相が示した方針では、都市部で保育室の面積基準の引き下げを認めるとともに、全国的に園庭や医務室の設置、耐火基準や避難設備の最低基準も撤廃して地方にまかせる方向です。
制度改悪の議論と時期を同じにして、基準引き下げの方向が出されてきたのは偶然ではありません。保育制度の見直しは、営利企業の参入をすすめることが大きな狙いです。それには、企業が自由にもうけをあげられる仕組みにすることと、基準をできるだけ引き下げて参入を簡単にすることが不可欠だからです。
保育がもうけの場になることで、保育条件の低下とともに、親と保育所との関係に、お金でサービスを売り買いすることによるゆがみが持ち込まれる懸念もあります。
今回の保育制度の改悪は、自公政治がすすめた社会保障の「構造改革」路線をそのまま保育に持ち込もうとするものです。約4カ月にわたり専門委員会で検討されてきましたが、当初から保護者や保育関係者が指摘してきた問題点は何も改善されていません。
制度改悪と最低基準の緩和をただちにストップし、認可保育所の大幅な増設で待機児童解消を図るよう求める声と運動を大きくひろげることが求められています。(おわり)(日本共産党女性委員会・米沢玲子)