2009年12月7日(月)「しんぶん赤旗」
保育制度改悪(上)
検討でみえた問題点
公的責任の後退明らか
保育制度改悪を検討している社会保障審議会少子化対策特別部会(大日向雅美部会長)は、その下におかれた二つの専門委員会で新しい保育制度の具体的な設計をすすめてきました。厚労省は、これまでの主な議論をまとめた論点整理を、9日の少子化対策特別部会に示す予定です。保育制度をめぐる議論は大詰めを迎えています。
論点整理では、厚労省のめざす新制度が全体的に明らかになっています。
今年2月の「第1次報告」は、保護者や保育関係者の強い批判を受けて、多くの論点をあいまいにしたまま、「公的責任は後退させない」とくり返し明言して取りまとめにこぎつけたものでした。
しかしこの間の議論と論点整理を見ると、公的責任後退の点でも、「直接契約」や「応益負担」などの仕組みでも、当初の計画どおりに制度改悪をすすめるものとなっています。
「直接契約」へ
新制度では、市町村は保育所の入所に責任を負わず、保育希望者に対して、保育の必要性と量、優先度を認定するだけとなります。
個人が保育所と「公的保育契約」を結ぶとして「公的」性格を強調しますが、利用者が自分で保育所を探して契約する「直接契約」制度であることに違いはありません。
保育所探しが大変になるという指摘をうけて厚労省は、待機児童が多い市町村では、自治体または新たに連絡協議会などの組織を設けて調整することを提案しました。
市町村がやるのでは今までと変わらないという意見や、別組織でやる場合、個人情報保護や公平性の面で問題があるという意見、低所得世帯や障害児が排除されないために調整する組織が必要などの意見が出されています。
利用者の利便性、公平性からも、申し込みから入所まで市町村が責任をもつ現行制度が最も優れているのは明らかです。
「応益負担」へ
保育時間では、現在はどの子も、保育所が開いている範囲内で柔軟な対応が可能ですが、今後は保護者の就労状況に応じて、あらかじめ利用できる保育時間が決められます。
1日では「長時間」(11時間程度)と「短時間」(6時間程度)、週当たりでは「週3日以上」と「週2日」に区分することが提案されています。3歳児以上は幼児教育の観点から週の利用日数に上限は設けない方向です。
利用条件がさまざまな子どもが混在するため、保育士が子どもの出入りを掌握することに追われ、集団としての保育が難しくなります。また職員の安定的な雇用が困難になることが懸念されます。
現在は所得に応じて決まる保育料が、「応益負担」つまり利用時間に応じた保育料になります。「保育が必要」と認められた量を超える保育や、土曜日の保育も週5日を超えれば、別料金となる考えが示されました。
国が決める利用者負担の水準によっては、長時間働かざるを得ない中・低所得者の負担が増大します。(つづく)(日本共産党女性委員会・米沢玲子)