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2009年12月7日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

国産植物油 自給率2%だけど

品質に挑戦する生産者


 いま大豆やナタネなど国民が消費する植物油の大半は、輸入品です。政府発表の「植物油脂」の食料自給率はわずか2%という低さです。そんななかで、国産油を生産するために努力を続ける地域があります。北海道の滝川市(ナタネ油)と、香川県小豆島=しょうどしま=(オリーブ油)の元気な取り組みを紹介します。


天ぷら 仕上がり黄金色に

北海道滝川市 ナタネ油

地図

 北海道滝川市では畑が一面黄色になるころ、生産者が主体になり、農協、行政、商店の人たちと共同で、「滝川・菜の花まつり」(5月下旬)を続け、今年で10回目になりました。テレビや新聞に取り上げられ、全道的に知られる一大イベントになっています。

 昭和30年(1955年)代は、春になると、どこの農家でも美しい菜の花畑が見られました。

 日本の1960年のナタネの作付面積は35万ヘクタールでした。その後、年々減少。61年に大豆貿易自由化(油糧大豆輸入)、71年のナタネ輸入自由化により、日本の農村からナタネはなくなりました。青森県横浜町や滝川市などで生産を続けていますが、いまナタネ生産面積はわずか800ヘクタールで、自給率は0・04%です。

 滝川でなぜナタネを生産するようになったのでしょうか。東北農業試験場(盛岡市、現・東北農業研究センター)で人体に影響があるとされるエルシン酸のない、キザキノナタネが開発されたと知り、97年に全国農民連が東北農試で研修会を開いたのです。私たちも参加し、困難のなかで研究を続け開発に成功したこと、素晴らしい品種であることを学び、作付けを始めようと考えました。

 最初は転作田に植えたのですが、水田は酸性土が多くなかなかうまくいきません。ここは昔、リンゴ栽培が盛んでしたが、価格暴落で採算が合わず、木を切り畑地になっていました。そこでナタネを栽培したところうまくいったのです。

 3人の農家で始めたのが、いまでは40戸の生産者で200ヘクタールに広がり広大な面積になりました。1戸で10ヘクタールも作付けする農家もあり、反収も多い人は350〜400キログラムを生産します。面積が日本一、収量は「世界一ではないか」と東北農試の職員に言われています。

 昨年から、圧搾でナタネ油を搾り始めました。農協の営農センターのなかに本格的な搾油機を入れて生産し、ビン入りの「滝川・菜種油」やドレッシングなどの製品を販売しています。ナタネ油で天ぷらを揚げると、菜の花と同じ見事な黄色に仕上がります。

 消費者はどんなナタネ油を食べているのでしょうか。ナタネを薬品で抽出処理や高熱処理した油が多く、大半は輸入の遺伝子組み換えです。滝川のナタネ油は薬品をいっさい使わず、圧力をかけるだけの非常に品質のいいものです。ビタミンEはしっかりと残り、酸化しないため新しい油を足すことで何度も使うことができます。

 ナタネ生産に対する国の助成は、昨年でまったくなくなりました。自給率を引き上げるためには、生産者も加工業者も安心して経営できる政策の確立がどうしても必要です。

 “金を出せば外国から農産物が買える”時代は終わりになっています。すべての農業団体、行政、消費者が参加し、国内農業生産をのばす合意をつくる運動が必要になっています。(宮井誠一・滝川菜の花まつり実行委員長)


栽培100年 美と健康の贈り物

香川・小豆島 オリーブ油

地図

 「オリーブ・アイランド」とも呼ばれる小豆島(香川県小豆郡小豆島町・土庄町)ではいま、オリーブの果実の収穫期を迎えています。

 オリーブはモクセイ科の常緑樹で、初夏に乳白色の小さな花を枝いっぱいに咲かせます。

 花の後には、小さな緑色の実が姿をあらわし、夏の日差しのなかで成長します。9月末から11月中旬ごろまでは、塩漬け用の緑色の実、11上旬から12月いっぱいは、オイル用の熟した黒紫色の実が収穫できます。

 小豆島のオリーブは101年前の1908年(明治41年)に、農商務省が三重、香川、鹿児島の3県を指定してアメリカから輸入した苗木で試作し、小豆島だけが栽培に成功したのが始まりです。

 これは気象、風土がオリーブ栽培の盛んな地中海沿岸とよく似ていることや、栽培者、加工業者のたゆまぬ努力があったからだといわれています。

 その後、一般の農家でも栽培されるようになり、面積は徐々に広がり、県花県木にも選ばれました。しかし、59年(昭和34年)の農産物輸入自由化により、スペインなどから安価なオリーブオイルが輸入されるようになり、生産者価格も下落し、栽培面積は急速に減少しました。

 近年になり、消費者の健康志向やオリーブの持つ平和の象徴などのイメージからオリーブの人気が高まり、小豆島のオリーブ製品は国産志向も相まって需要が増えています。

 小豆島町では、貴重な地域資源であるオリーブを利用して町の活性化を図るため、苗木代の助成などを行い、オリーブ栽培を推進しています。荒廃農地を耕作しオリーブ畑にするなどして、いまでは栽培面積は90ヘクタール、生産量は約150トンに回復し、JA(農協)に出荷している生産者は約150人になりました。

 他の植物油が種子を搾るとき高熱を加えたりしてつくるのに対し、オリーブオイルは傷みやすいため、収穫後72時間以内の果実から、遠心分離機だけで採油したオイルです。

 オリーブオイルは品種や気象条件、土壌条件、収穫時期など栽培条件ごとに味や香り、栄養成分が変化します。つまりオリーブオイルはオリーブ果実に隠されている味、香り、ビタミンなどのすばらしい特性を受けついだ天然のジュースなのです。

 主要成分として、オレイン酸や、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質が多く含まれ、動脈硬化や糖尿病の予防などに効果があると言われています。

 まさにオリーブオイルは「植物油の女王」とたたえられる美と健康の贈り物です。地域が力を合わせて守っていきたいと思っています。(鍋谷真由美・日本共産党小豆島町議)



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