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「しんぶん赤旗」日曜版 2009年12月6日(日)号

過渡的な情勢 共産党の役割

共産党第25回大会決議案のポイント


 自公政権の退場で大きな変化が始まる激動の情勢のもと、来年1月、4年ぶりに開かれる日本共産党の第25回大会。日本の政治の現状をどうつかむか。日本共産党はどんな役割を果たすのか―。11月26、27日の第10回中央委員会総会で決定された大会決議案のポイントを編集部でまとめました。


第1章/日本政治の「新しい時期」とそれをつくりだした力

 「日本政治の『新しい時期』とそれをつくりだした力」―これが決議案第1章のテーマです。

 今回の総選挙。自民・公明政権退場という国民の審判がくだされました。

 決議案は、この審判が「『過渡的な情勢』と特徴づけられる日本政治の『新しい時期』を開くものとなった」とのべています。

過渡的とは

 「過渡的」とは―。決議案はこう指摘します。

 ―国民の審判は、日本の政治にとって前向きの大きな一歩で、新しい歴史のページを開く意義をもつ。「政治を変えたい」という強い願いは、選挙後の情勢全体を前向きに動かす大きな力として作用しつづけている。

 ―同時に、日本の政治は、「二つの異常」―「異常な対米従属」、「大企業・財界の横暴な支配」から抜け出す方向を定めるにはいたっていない。国民が新しい政治を本格的に探求する「新しい時期」が始まった。

 民主党中心の新政権。「政治を変えたい」という国民の願いを反映した前向きの要素も存在しますが、「二つの異常」から抜け出す立場は示されず、国民の利益に反した問題点や議会制民主主義を危うくする逆行的要素も軽視できません。

 このなかで、日本共産党は、「政治を変えたい」という国民の期待にこたえ、不安や批判を代弁して問題点をただし、日本の政治をさらに前にすすめる「建設的野党」として奮闘します。

 日本政治の「新しい時期」を開いた力は何か。決議案は、「旧来の政治と国民の利益との矛盾であり、国民の世論とたたかい」とズバリ指摘しました。

 日本共産党は、前向きの変化をつくるうえで重要な役割を果たしました。労働者派遣法の原則自由化や、後期高齢者医療制度の導入、コメ輸入自由化など、国民の利益にたって反対をつらぬいたのは共産党だけでした。その主張がいま国民多数の声となり、現実政治を動かしているのです。

第2章/「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務

 第2章は、「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務についてです。

 決議案は指摘します。「国民が、自らの切実な要求を実現することを出発点にしながら、政治的な体験を一つひとつ積み重ねるなかで、日本の政治をさらに前にすすめる自覚と力量を高めていく必然性がある」

 その意味は―。

 新しい情勢のもとでは、国民が声をあげれば国民要求が一定の範囲内で実現する条件が生まれます。他方、沖縄の基地問題を解決しようとすれば、「日米軍事同盟体制」にぶつかるなど、国民要求と日本の政治の「二つの異常」とのかかわりが、これまでよりも直接的な形で明らかになります。

 そのなかで民主党政権の過渡的な性格や限界、問題点、古い政治の代弁者としての自民党の反動的な姿勢や、「建設的野党」としての共産党の役割が、国民の前で明りょうになっていくのです。

 このプロセスは自然にはすすみません。

 「日本の政治が『二つの異常』から抜け出す力を、国民の間にいかにつくりあげていくか。その自覚と力量の前進を後押しし、促進するところに『過渡的な情勢』のもとでの日本共産党の任務がある」。決議案はその任務を三つあげています。

国民要求にこたえて現実政治を前に動かす

 第一は、国民要求にこたえて現実政治を前に動かすことです。ここでは、各分野のそれまでの政策のどこを転換するか、それぞれの「要」をにぎったたたかいが重要です。

くらしと経済の分野

 雇用では労働者派遣法の抜本改正など「労働法制の規制緩和から規制強化への転換」、社会保障では後期高齢者医療制度のすみやかな撤廃など「社会保障費削減の『負の遺産』の是正」が重要です。さらに中小零細企業や農林漁業、子育て支援、地球環境、税制の各分野で転換の要をなす点を決議案はのべています。

平和と民主主義の分野

 「米軍再編」の名による基地強化・固定化に反対し、縮小・撤去をめざします。新政権最初の試金石、沖縄・普天間基地問題では「県内たらい回し」路線との決別と無条件撤去を要求。米軍への「思いやり予算」撤廃を主張します。

 さらに、自衛隊、核兵器、憲法、教育、男女平等での課題を提起しています。

「2つの異常」をただす改革

「異常な対米従属」の打破

 第二の任務は、旧来の政治の「二つの異常」をただし、党綱領が示す「国民が主人公」の新しい日本への改革をめざす国民的合意をつくることです。

 その一つは、「異常な対米従属」の政治を打破し、独立・平和の日本をきずく改革です。

 来年は日米安保条約改定から50周年。この間に軍事同盟をめぐる世界の情勢は、大きく変わりつつあります。

 半世紀前、米ソを中心とした軍事同盟のもとにあった国は52カ国。植民地も含めて世界人口の67%を占めていました。

 ところが、いまでは旧ソ連の軍事同盟は基本的に解体・解消。米国を中心にした軍事同盟も解散・機能停止がつづき、現在、実態的に機能しているものはNATO、日米、米韓、米豪の四つです。これらの軍事同盟のもとにある国は31カ国、世界人口の16%。半世紀で人口の67%から16%に―。軍事同盟が「20世紀の遺物」になっているのです。

 それなのに日米軍事同盟は、現在機能している軍事同盟に比べても、特別に異常な特質を持っています。

 日本の米軍基地は、1980年代に面積で2倍に(自衛隊共用を含む)。日本防衛と関係のない「殴り込み部隊」も次々配備。深刻な事件・事故・犯罪、米軍駐留経費に国民の血税を世界一つぎこむ…。「従属性・侵略性の深さは、世界に二つとないほど異常で、突出したもの」となっています。

 こうした日米軍事同盟の真の姿を広い国民の共通の認識にするために力をつくします。

「ルールある経済社会」を

 もう一つの改革は、世界でも異常な「財界・大企業の横暴な支配」を打破し、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくることです。

 この改革は、机上のプランではありません。世界の人々のたたかいを反映し、すでに国際条約や欧州で実現しているルールを踏まえて、日本にふさわしい形で具体化するものです。

 国際条約では国際労働機関(ILO)の183の条約中、日本が批准しているのは4分の1にすぎません。とりわけ労働時間・休暇関係の18条約はすべてが未批准で、そんな国は主要資本主義国で日本とアメリカだけです。

 国連女性差別撤廃条約も批准しながら、実質的には全く実行していません。国連女性差別撤廃委員会から厳しい差別是正の勧告が出されています。

 また、欧州連合(EU)では、共通のルールとして、週48時間をこえる労働の禁止、パートタイム・フルタイム労働者の均等待遇、派遣労働者と正社員の均等待遇の「指令」が出されています。

 「ルールある経済社会」への転換をはかることは、貧困と格差の拡大や社会保障の劣悪化など日本経済と社会が直面する諸問題を解決し、日本経済と社会の健全な発展への大きな道を切り開くものです。

日本の政治の反動的逆行を許さない

 第三の任務は、「日本の政治の反動的な逆行を許さない」ことです。民主党政権において、民主主義に逆行する一連の問題点があらわれています。

 「脱官僚依存」を名目とした「国会改革」。法律で「官僚答弁禁止」を決めるのは国会の国政調査権や行政監視権を決定的に弱めます。とくに、内閣法制局長官の過去の答弁にしばられずに解釈改憲をすすめようというねらいは危険です。

 国会の役割を否定する「政治主導」の名による強権的国家づくりは、財界が青写真を描いたもの。

 民主党がマニフェストに明記している衆院比例定数削減。財界が強権的国家づくりの「要」に位置づけている単純小選挙区制への一里塚です。

 マスメディアのあり方も根本から問われています。小選挙区制の推進などにとりくんできた「21世紀臨調」という「運動体」に多くのマスコミ関係者が参加しています。マスメディアに「社会の公器」としての責務を自覚して、あり方を見直すよう提起します。

 日本共産党がこうした「三つの任務」をやりとげるなら、日本の政治が「過渡的な情勢」を前向きに抜け出し、「国民が主人公」の民主的政権―民主連合政府を樹立する条件が開けてきます。総選挙後、従来の保守層のなかにも大変動がおこっています。日本共産党はこれらの大激動、新しい条件をくみつくし、国民的共同―統一戦線運動の新たな発展への探求を前進させます。また全国革新懇(「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会」)の運動を重視し、その発展のために知恵と力をつくします。

 こうして2010年代を党躍進の歴史的時代とするために全力をつくす―。決議案はそう強調しています。

第3章/大きく変わりつつある世界と、日本共産党の立場

 第3章は、「大きく変わりつつある世界と、日本共産党の立場」です。

 前大会以来の4年間を振り返ると世界は、曲折や逆行をはらみながらも、全体としては、綱領と大会決定が見通した方向で、平和と社会進歩への激動が進展しつつあります。それは、日本共産党が、日本でとりくんでいる社会変革の事業が、世界の本流に立ったものであることを、力強く示すものとなっています。

 アメリカのオバマ政権は発足から1年。軍事・外交戦略は、なおその全体像が明らかになっていませんが、事実として確認できることは、国連を無視した単独行動主義からの転換と、「核兵器のない世界」の追求を国家目標とするなどの核問題での前向きの変化です。この変化を生みだした力は「平和を願う世界諸国民の世論と運動」です。

 同時に、アメリカの軍事的覇権主義への固執にはアフガニスタンを見ても根深いものがあります。日米関係についても、これまでの覇権主義的な対日支配を変更する姿勢は見られません。日本共産党はアメリカの前向きの変化は歓迎し、変化を促すとともに、覇権主義のあらわれについてはきびしく批判し、根本的転換を求めていきます。

 一国覇権主義の世界支配に代わって、国連憲章にもとづく平和の地域共同体の動きが広がっています。

 アジアでは東南アジア諸国連合(ASEAN)憲章の発効と、東南アジア友好協力条約(TAC)の広がりです。ラテンアメリカでは中南米・カリブ海すべての国で構成される「中南米・カリブ諸国機構」の発足に向けた首脳会議が2010年に開かれるなど、地域の平和と安定の機能を発揮しつつあります。

 新しい民主的な国際経済秩序を求める動きが、世界経済危機をへて、いっそう加速しています。

 9月に米・ピッツバーグで開かれた主要国や新興工業国など20カ国・地域のG20首脳会合は、経済発展の道筋として「異なるアプローチ」があることを認める宣言を採択。これまでのように米国・IMF(国際通貨基金)、世界銀行が「司令塔」になって、世界全体を支配してきたやり方が壊れつつあります。

 どうしたら人類は「核兵器のない世界」に到達できるのか―。決議案は核心をなす二つの問題をあげています。

 一つは、核兵器廃絶のための国際交渉のすみやかな開始です。さまざまな部分的措置もそれと一体でとりくんでこそ「核兵器のない世界」への道が開かれます。

 もう一つは「核抑止力」論からの脱却です。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長も国連NGOの年次総会で「核兵器は…いかなる軍事的価値も与えられるべきではない」とのべています。いまこそ核兵器廃絶の世論を広げる時です。

 日本共産党の野党外交も、核問題で米国大統領との書簡のやりとりを通じて、米国政府との公式の話し合いのルートを開くなど、4年間で地域的にも内容的にも大きく発展しました。

第4章/国政と地方政治での躍進、強大な党建設をめざす方針

 第4章は、国政と地方政治での躍進、強大な党建設をめざす方針です。「過渡的な情勢」のもとでたたかわれる来年夏の参院選。日本共産党は「比例を軸に」つらぬき、比例代表選挙では650万票以上の得票と、5議席の絶対確保を目標とします。選挙区選挙では全選挙区に候補を擁立し、とくに東京選挙区では議席を絶対確保する目標をかかげ、かつては議席をもったことがある北海道、埼玉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫で積極的に議席獲得に挑戦します。

 党綱領の実現をめざし、それぞれの党組織が中期的展望にたった「成長・発展目標」をもち、系統的なとりくみをすすめます。目標の基本は国政選挙でどの都道府県、自治体・行政区でも「10%以上の得票率」をめざし、5%以下を早期になくすことです。決議案は、質量ともに強大な党建設をすすめ、2010年代を党建設でも歴史的前進を刻む時代とするために全力をつくすことを呼びかけています。

第5章/激動の世界と未来社会への展望について

 第5章は、「激動の世界と未来社会への展望について」です。

 ここでは21世紀の世界を大きな視野で見て、資本主義の体制の是非が問われる時代に入っていることを強調しています。

 社会的貧困や格差の広がり、飢餓人口の拡大、金融危機と過剰生産恐慌、地球温暖化など、どれをとっても、「利潤第一主義」の資本主義の枠組みでは問題の根本的解決がはかられず、資本主義を乗り越える新しい体制への前進の条件が熟してくる―。決議案の示す展望です。

 さらに、社会主義をめざす国々やラテンアメリカの国々など、21世紀の世界の現実のなかで、未来社会の動きがさまざまにあらわれています。決議案は「綱領の展望が、世界の現実のなかで実証されつつあることに、深い確信をもって、未来にのぞもう」と結んでいます。


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