2009年12月5日(土)「しんぶん赤旗」
働くルール 日本 立ち遅れ
世界と日本 25回党大会決議案から
日本共産党第25回大会決議案では、「異常な対米従属」の打破とともに、「ルールある経済社会」をつくることを打ち出しました。「カローシ(過労死)」が国際語となるなど「ルールなき資本主義」といわれる日本。働くルールをはじめとする現状を、ヨーロッパの主要な資本主義国や国際条約などの到達点からみてみると―。
条約
批准4分の1
90年前の「8時間制」いまだ批准せず
働くルールに関する“世界基準”ともいうべき国際労働機関(ILO)が採択した183の条約(失効5条約をのぞく)のうち、日本が批准しているのは48の条約で、わずか4分の1にすぎません。
とりわけ日本は、1号条約(8時間労働制)をはじめ18本の労働時間・休暇関係の条約を1本も批准していません。こんな国は主要な先進資本主義国のなかで、米国と日本だけです。
111号(雇用における差別禁止条約)、158号(解雇規制条約)、175号(パートタイム条約)など、焦点となっている一連の条約も未批准です。
ILOは、1917年のロシア革命で生まれたソビエト連邦が8時間労働を定めたことが契機となって1919年につくられ、その第1号条約として定めたのが、1日8時間・週48時間労働です。
90年も前にできた条約を日本がいまだに批准していないのはなぜなのか。残業についてILOが“どうしても必要な緊急のときに限る”としているのに対し、日本は“労使の協定があれば認める”として財界・大企業いいなりで上限を法律で規制していないため、批准しようにもできないからです。
その結果、日本はドイツやフランスに比べて460時間以上も労働時間が長くなっています。(製造業、06年)
「過労死」、「派遣村」など他の国には見られない異常な現状は、こうした大企業いいなりの政治から生まれているのです。
欧州
手厚い保障
パートの均等待遇、有期雇用は制限…
党決議案は、「欧州の経験は、日本の経済の民主的改革をすすめるうえで重要な参考になる」とのべています。
欧州連合(EU)は、経済的共同体の関係が発展するにつれて共通する「社会的なルール」づくりを積極的にすすめてきました。とくに1990年代以降、社会労働政策で共通のルールを確立する動きがすすんでいます。
労働時間指令 残業、変形労働時間を含めて週48時間を超える労働を禁止する
パートタイム労働指令 パートタイム労働者とフルタイム労働者の均等待遇を定める
有期労働指令 雇用契約期間の定めがある労働は合理的理由がある場合に限定する
派遣労働指令 派遣労働者と正社員との均等待遇を定める
欧州規模で労働組合や経営者団体、公共企業体の協議がおこなわれ協約が結ばれるという、ルールづくりをすすめる制度的枠組みもつくられています。
いま、ヨーロッパ諸国でも世界経済危機の被害を受け、失業者も出ています。しかし、日本の「派遣村」のように、職を失うとともに住居も奪われ、ホームレスに突き落とされるという事態は起こっていません。
労働者のなかで非正規雇用労働者は1割前後であり、失業給付が1年から3年程度保障され、生活扶助も手厚いうえに、住まいに関する権利が国民に広く保障されているからです。
世界経済危機も「社会的ルール」があるかどうかによって国民に対する被害の規模や度合いなどは大きく違っています。「ルールなき資本主義」といわれる日本では、経済危機が特別に残酷な形で現れているのです。
女性差別 日本に勧告 国連
「女性差別の面でも、国際条約に反するおくれた実態が、社会生活の各分野に残って、国際的な批判を受けている」と日本共産党綱領はのべています。
国連加盟192カ国中186カ国が批准している女性差別撤廃条約(1979年12月18日、国連総会で採択)は、雇用にかかわる男女平等、女性の社会進出と家庭の問題を両立させることなど、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃を、締約国と政府に義務付けた画期的な国際条約です。
日本はこの条約を1985年6月に批准しました。しかし、「日本はこの条約を形式的に批准しながら、実質的にはまったく実行していない」(第25回党大会決議案)のです。
たとえば、賃金の男女格差(パートタイム労働者を含む)をみても、男性を100として、女性は50・7(2008年)であり、批准当時(85年)の51・8と比べ、まったく改善されていません(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。
格差が徐々に縮小しているといわれる正規労働者の男女賃金格差でも、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均82%にたいし、日本は67%です。
8月に国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告は、「本条約が、拘束力のある人権関連文書として、また締約国における女性にたいするあらゆる形態の差別撤廃及び女性の地位向上の基盤として重視されていない」などと厳しく批判し、条約の完全実施にもとづく差別の是正を強く求めています。
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▲2006年の指標をOECD(経済協力開発機構)が08年にまとめたもの |