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2009年12月5日(土)「しんぶん赤旗」

主張

高校授業料無料化

国も地方も全力をつくせ


 「世界一高い学費をあらためよ」「高校生を救え」の声が、政治を変えつつあります。

 文科省は「高校授業料実質無償化」の検討を始めました。その一方、政府のなかには所得制限を設けるなど削減の動きもあります。新政権が国民の願いに正面からこたえるかどうかが問われます。

卒業予定の在学生にも

 急いで求められるのは、来年3月卒業の高校生への対応です。

 リストラや不況の影響は厳しく、この秋の私立高学費滞納者は前年の1・5倍に急増しました。このままでは多くの高校生が退学・除籍においこまれます。来春の「実質無償化」を待たずに、いますぐ救う手だてが必要です。

 そのために使える国の「高校就学支援基金」約162億円が今月、都道府県に配分されました。ところが同基金は、自治体が新規の支援策に乗りだす場合、自治体も国と同じ額を拠出する仕組みです。そのため自治体は二の足をふみ、宝の持ち腐れとなりかねません。23道府県から改善の要望書も出されています。

 事態は一刻の猶予もなりません。経済的理由で高校を追われる若者を一人も出さないために、政府は基金を改善し自治体の負担をなくすべきです。同時に自治体は学費減免、奨学金支給など思い切った対策を講ずるべきです。

 一方、文科省が来年度に概算要求した「実質無償化」は、世帯の申請にもとづき国が公立高校授業料相当の交付金を学校設置者にわたすというものです。

 交付期間は3年で、高校を半年で退学、その後新たな高校に入りなおす場合、最後の半年分の授業料は自己負担です。「給付制奨学金」には切実な通学費等が盛り込まれず、「一番困っている生徒を救えない」と指摘されています。

 国民の要望にそって拡充することが求められます。

 なかでも問題なのは、私立への支援です。私立高校生に公立授業料相当額11万8千円を支給するといいますが、私立の学費負担は初年度で平均70万円以上です。60万円ちかい負担が残ります。

 日本の高校は公立が7割、私立が3割です。進学者の3割は私立に通うことになります。そういうもとで、来春の公立の学費は入学金の5800円だけ、かたや私立の学費は数十万円というのは、あまりに不公平です。

 私学には、保護者が望むユニークな教育をおこない、国民の教育の自由を保障する役割があります。私立高校は公教育の一環であり、多くの国で公費運営が基本です。無償化は当然の方向です。

安心して学べる国に

 まず、低所得者から私立高校無償化をすすめることは、来年度からでも、可能性があることです。

 概算要求では年収500万円以下の家庭は約24万円が支給され、あと少しの上積みで授業料は無償です。年収350万円以下の世帯には、その分を支給できる予算と入学金を支給する「給付制奨学金」が検討されています。

 これらの予算措置には、地方に判断が委ねられた交付税部分もあり、都道府県での制度設計も問われることになります。

 学費無償化は、誰もが安心して学べる国をつくるという、“国のかたち”の問題です。その扉を開くため、力をあわせるときです。



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