2009年12月4日(金)「しんぶん赤旗」
主張
改正貸金業法
利用者口実の骨抜き許せぬ
サラ金やヤミ金からの借金を苦に自殺者が相次ぐなどの異常な事態をただそうと、2006年12月に成立した改正貸金業法が、遅くとも来年6月までに完全実施されることになっています。ところがそれを目前に、一部で法律の見直しや規制強化を見送るなどの動きが出ており、完全施行を求めて世論と運動を盛り上げることが急務となっています。
改正の完全施行は不可欠
ヤミ金など貸金業者が異常な高金利で貸し付け、執拗(しつよう)に返済を迫って利用者を苦しめるクレジットやサラ金・ヤミ金、商工ローンなどの問題は、いまも各地で自己破産や家族崩壊などの悲劇を引き起こしている深刻な社会問題です。借りる意思のない人にまで借金するよう迫り、高金利での返済を求める悪質な例も相次いでいます。先日、北九州市で開かれた全国クレサラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会でも、しつこい借り入れの「押し付け」で苦しめられているなどの紹介が相次ぎました。
改正貸金業法は、こうした異常事態を正すために、国会で全会一致、成立した法律です。勤務先に押しかけるなどの異常な取り立ての規制や悪質な業者への罰則強化などを段階的に実施し、自治体での多重債務相談窓口やセーフティーネット貸付なども充実して、対策を前進させてきました。
もともと貸金業者をめぐって深刻な事態が相次いだのは、年15〜20%の利息制限法の上限金利を上回っても出資法の上限金利29・2%までは刑事罰が科されなかったため、このグレーゾーン金利を狙った高金利が横行したのと、借り手の返済能力を無視した過剰な融資がおこなわれてきたことが大きな原因です。グレーゾーン金利を廃止し、「総量規制」で年収の3分の1以上の貸し付けを禁止する改正貸金業法の完全施行は、絶対あいまいにできない課題です。
貸金業者などは、「完全施行すると、利用者に大きな影響を及ぼす」などと、「見直し」や規制の緩和を言い出しています。完全施行を引き延ばし事実上骨抜きにするのが狙いで、「利用者のため」などというのがまったくの口実であるのは明らかです。グレーゾーン金利の廃止や「総量規制」を完全実施しなければ高金利での貸し付けがなくならず、ふたたび多重債務被害が拡大するのは目に見えています。
業界側は、融資が減り中小零細事業者が破たんしそうだともいっていますが、金融庁が実施した調査でも中小企業の資金繰りの悪化は不況や金融機関の貸し渋りによるのが大部分で、貸金業法改正の影響はほとんど見られません。中小企業など法人は、もともと「総量規制」の対象でもありません。
鳩山政権は断固実行を
改正貸金業法を遅くとも来年6月までに完全施行することについては、全国クレジット・サラ金問題対策協議会が8月の総選挙前に実施したアンケートでも、鳩山由紀夫首相をはじめほとんどの議員が賛成しています。貸金業界などの要求を受け、一部の国会議員らがいまになって「見直し」などを言い出すこと自体、国民の審判を裏切る不当なものです。
法律はすでに成立しており、実施するのは政府の責任です。貸金業者による異常な事態を繰り返させないため、鳩山内閣は完全施行を予定通り実施すべきです。