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2009年12月3日(木)「しんぶん赤旗」

主張

アフガン問題

米軍増派で解決はできない


 オバマ米大統領がアフガニスタン戦争についての「新戦略」を発表しました。策定に3カ月以上をかけたところには、反戦・えん戦感情を強める米国民に米軍増派への支持を求めることの困難さが示されています。しかし、今回も3月に発表した「戦略」と同様、焦点であるアフガン問題解決の道筋を見通せないままに、3万人の米軍増派を決めました。アフガンに展開する米軍は約10万人と、オバマ政権下で3倍に膨らみます。

戦争遂行シナリオ

 オバマ大統領は、NATO(北大西洋条約機構)諸国にも1万人近い増派を求めています。これを合わせた増派規模は現地米軍司令官の要求をほぼ満たすものです。武装勢力タリバンの攻勢を抑え込み、拠点を確保し、アフガン人を訓練して戦争の「アフガン化」を進めることで、戦争を「成功」させるというシナリオです。

 戦争が泥沼化した原因の一つは、米軍、NATO軍の作戦がアフガンの一般市民に多大な犠牲をもたらしていることです。生活も一段と悪化し、アフガン国民は外国軍駐留に反発を強めています。

 アフガンのカルザイ政権は選挙での不正と腐敗などで内外から正統性を問われています。それでもオバマ政権はカルザイ政権をパートナーとせざるをえません。腐敗一掃をはじめ政権運営の全面にわたってカルザイ政権への圧力を強めることで、国際社会の信任につなげようとしています。

 それはアフガン政権の「独立」性をさらに失わせるものにほかなりません。アフガン国民の目からは、米軍、NATO軍は占領軍としての性格をいっそう強めることになるでしょう。

 オバマ大統領は、この戦争には「同盟諸国と世界の共通の安全保障がかかっている」と述べました。「テロとの戦い」を強調することで、NATO諸国など派兵する国ぐにやアフガン周辺諸国の支持をとりつけようとしています。

 しかし、アフガン問題を解決するには国際社会の正統な代表こそが正面に立つ必要があります。その役割を担えるのは国連以外にありません。オバマ政権は国連での真剣な議論も決議もなしに事を進めています。オバマ大統領自身が掲げる「国際協調」の立場にも矛盾する姿勢です。

 組織的なテロは多くの場合、貧困や抑圧などの社会的不公正を土壌にしています。市民のあいだに身を潜めるテロリストと、一般市民との区別は容易につきません。軍事攻撃が一般市民に被害をもたらすことはアフガンの現実が明らかにしています。テロを軍事で根絶することはできません。テロは犯罪であり、警察力と国際的な協力によって解決すべきものです。

政治的和平への転換を

 戦争は8年を超えました。オバマ大統領は今回、1年半後までは撤退しないことを明らかにし、戦争の長さはベトナム戦争にも匹敵することになります。今後も拡大する犠牲が和平をさらに困難にさせることは避けられません。

 問題の解決には政治的和平への転換が肝心です。貧困をはじめアフガン国民が直面する問題を解決することが不可欠です。そのためにも、国連の枠組みのもとに国際社会が協力する必要があります。これらを実現するためにも、米軍は撤退に踏み出すべきです。



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