2009年12月1日(火)「しんぶん赤旗」
主張
葛飾ビラ配布事件判決
これが「憲法の番人」なのか
東京・葛飾でのビラ配布弾圧事件の上告審で、最高裁第2小法廷は11月30日、マンション各戸へのビラ配布を「犯罪」とした東京高裁判決を追認する判決を言い渡しました。
共同住宅も配布は自由
僧侶の荒川庸生さんは2004年12月、日本共産党の「葛飾区議団だより」や区民アンケートなどをマンションのドアポストに配布しました。この行為は一般に市民が普通にやっている当たり前の行動であり、マンションの廊下や階段などを通ったことが住居の平穏を侵害する犯罪などではないことは誰の目にも明らかです。
一審は無罪、二審は有罪。最高裁が「憲法の番人」として求められていたのは、表現の自由と民主主義を守って無罪を言い渡すことです。国民常識に反した今回の判決は、きびしく批判されなければなりません。
マンションや旧公団など共同住宅へのビラ配布は、政党の政策であれ、労働組合の宣伝であれ、市民運動であれ、商業広告であれ、全住民に対して誰でも気軽にできる大切な表現手段です。とりわけ荒川さんが行ったビラ配布は、都議会、区議会の現状や議員の活動を有権者に知らせ、住民要求を集約するもので、民主主義と地方自治を支える重要な活動です。
ところが最高裁判決は、言葉の上では「表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければなら」ないとのべながら、マンション管理組合の管理権にもとづくビラ配布の禁止措置は認められるとしました。これは、共同住宅で現実に行われているビラ配布の実態からかけ離れている点でも、最高裁が憲法の民主的原則を棚上げする点でも、まったく説得力のないものです。
荒川さんが配布したマンションの管理組合は、住民の総意で政治活動用のビラ配布の禁止を決めた事実はありません。荒川さんの件で被害届も出していません。そもそも、憲法の表現の自由で保障されているビラ配布を禁止することを管理組合が決定できる、という考え方が間違っているのです。
わが国では、自衛隊のイラク派兵が強行されるなかで、政治の民主的改革や「憲法を守れ」と要求するビラ配布に対する弾圧が相次ぎました。葛飾ビラ事件や、国家公務員が休日に職務と無関係に「しんぶん赤旗」号外を配布したことを、国公法・人事院規則の政治活動制限に違反するとした堀越事件、世田谷事件がそれです。
これに対し、国連自由権規約委員会は昨年10月、日本政府に言論表現の自由を守る措置をとるよう勧告しています。裁判所が言論表現の自由を守ることができない現状が続いていることに、国内外からさらにきびしい批判が寄せられるのは避けられません。
日比谷集会の成功を
言論表現の自由を守るたたかいを粘り強く広げてきた全労連、国公労連、自治労連、国民救援会、自由法曹団など実行委員会は4日、「言論・表現の自由を求める12・4日比谷集会」を開催します。
憲法で保障された言論の自由を現実にゆきわたらせるため、葛飾ビラ配布最高裁判決に抗議し、ビラ配布の権利を守る世論をいっそう広げましょう。その新たな一歩として日比谷集会を大きく成功させることをよびかけます。