2009年11月30日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
区画整理
住民あってのまちづくり
全国各地の区画整理事業で、住民は土地を削られ(減歩)、移転、立ち退きなどを迫られます。住民の意見と生活再建の要求をしっかり反映させなければならないはずですが、実態はどうか。東京と兵庫の住民運動の経験を紹介します。
スーパー堤防計画
東京・江戸川
ここ東京都江戸川区小岩に移り住んで100年になります(わたしで3代目)が、おじいさんが建てた最初の家が今でもしっかりと存在しており、わたしの誇りとなっております。この地に「江戸川スーパー堤防と一体化された区画整理事業」が襲いかかったのは、今から4年前のことであり、わたしが住む北小岩18班地区は「先行モデル地区」と指定されました。
ここは四方を堤防、総武線、千葉街道で囲まれた、東西160メートル南北120メートルの長方形区画に約70軒、255人が住む小さい地区ですが、それなりの歴史があるのです。
江戸川区行政は早速説明会を開始するや、手続き(区議会の了解、都市計画決定等)を踏まず、2008年3月から用地(土地・建物)の先行買収に着手しました。その後も区行政は住民無視のますます強引なやり口を続け、最近、議会の了解を待たずに「区による都市計画決定」をおこない、今年中に「事業計画化」しようと、躍起になっています。
住民はこの事業に反対して、北小岩江戸川町会(18班はその一部)ではアンケート調査をおこない、75・2%の住民が反対していることが明らかになりました。11月16日には北小岩の「スーパー堤防・街づくりを考える会」や篠崎公園地区の「スーパー堤防と道路問題を考える住民の会」と共催で国会請願、院内集会、記者会見などをおこないました。
こうした経過を経験して感じることは、日本全国で区画整理に苦しめられている住民がなんと多いことか。区画整理という公共工事=地上げ、が蔓延(まんえん)し、国民の暮らしも国家財政も破たんさせているこの現状を救う手だてはないのか。区画整理による土地価格の値上げや自治体に少しばかり高い価格で土地・建物をかってもらうといった目先の利益に目がくらむという情けない行動―なんとかならないのかという心の底からの怒りがこみ上げてくるのです。
区画整理法、都市計画法、河川法などを、住民主権の視点から全面的に改定することが必要だと痛感します。(中野守・北小岩18班スーパー堤防とまちづくりを考える会事務局長)
江戸川区のスーパー堤防・区画整理 江戸川右岸の北小岩地域で、約2・2キロにわたり幅300メートルにもおよぶ地区に盛り土をしてスーパー堤防をつくり、これと一体で区画整理をしようという計画。住宅約1800棟、約6500人が影響を受けます。事業が進めば工事中、4年以上の仮住まいを強要されます。下流の篠崎公園地区にも、同様の計画があります。
国交省はスーパー堤防を、「まちづくり」と称する区画整理、再開発などと一体で進める方針を示しています。住民は、川の全流域につくらなければ意味がないがそれは無理で、巨額の税金を無駄遣いする事業であり、洪水には現在の堤防を改修することなどにより十分備えることができる、と批判しています。
震災復興の駅前開発
兵庫・西宮
1995年1月17日早朝、「どん!」という震動とともに多くの家屋が倒壊し、6千人余の命を奪った阪神・淡路大震災から15年目を迎えようとしています。兵庫県の阪急西宮北口駅北東の震災復興区画整理(約37ヘクタール、約1500世帯)も換地処分を終え、町も落ち着きを取り戻しています。
私たち「区画整理を考える会」(約50世帯)は、ノー減歩・ノー清算や生活再建ができる補償を求め活動してきました。その結果ほぼ要求どおりの結論となりましたが、「まちづくり」運動としては問題点も残しました。それは多くの転出者を出したことと、道路建設による地域コミュニティーの破壊でした。このことは後になって分かったことですが。
その後2005年には、阪急西宮北口駅南東の西宮球場跡に“東洋一”の商業施設を建設するという計画が提示されました。この計画に対しては、地元自治会を中心に総力挙げて運動をしました。
主眼は、商業施設による環境破壊(騒音・振動・大気汚染などの交通公害)を許さないことでした。阪急に要望書を出し、交渉を続けました。第二は、要望書でも企業の社会的責任を明確にして「まちづくり」への貢献に責任を果たすことを求めて運動しました。
その結果、商業施設はできましたが、夏まつりへのハード・ソフト面の協力や、商業施設内に深津小学校区の自治会を含む協議会(約4000世帯)の集会所建設、ガード下に資材を置く倉庫の提供、道の要所要所にガードマンを配置する交通安全対策など「まちづくり」にかかわる多くの協力をえることができました。
区画整理運動時は、当面の要求実現に目を奪われていましたが、今回は、「まちづくり」をテーマにして活動を進めてきました。日常的に自治会同士の付き合いを大事にしてきたことや、私自身自治会の結成にかかわり、その後30年役員を続け、コミュニティーづくりに貢献してきたことも、今回の結果に結びついたと思います。
これから少子化が進む中での「まちづくり」は、箱モノが中心になるべきでなく、地域の日ごろからのコミュニティーづくりにあることを、運動を通じつくづく感じました。(東昇・深津地域協議会副会長)