2009年11月30日(月)「しんぶん赤旗」
主張
来年度予算編成
削るべき無駄遣いにメスを
行政刷新会議の作業グループによる「事業仕分け」が終了し、2010年度の予算編成が大詰めを迎えています。
鳩山由紀夫首相は「政治的判断が求められるものも出てくる」としつつも、「『仕分け』でやってくれたことを基本的に重く受け止める」とのべています。
大きな無駄を温存
「仕分け」では、無駄遣いを洗い出した部分もある半面で、国民本位の予算にしていく上でメスを入れるべき大きな無駄遣いが温存されています。
何より、海外派兵を本格化するヘリ空母や、アメリカの軍事戦略の一翼を担うミサイル防衛など、世界とアジアの平和を脅かす軍拡にメスは入っていません。米軍「思いやり予算」でも、「仕分け」対象となったのは日本人従業員の賃金水準のみにとどまりました。
大型公共事業では東京外環道やスーパー中枢港湾など、巨額の浪費にはメスが入りませんでした。
その一方、医療や保育、科学技術など国民の暮らしと日本の将来に削ってはならない大事な予算が乱暴な議論によって切り捨てられていることは見過ごせません。
「仕分け」作業には、小泉・竹中「構造改革」の推進者が含まれています。雇用の規制緩和や社会保障の抑制など、国民生活を破壊した「構造改革」に対して、国民は衆院選ではっきりと退場を宣告しました。社会保障など暮らしを守る施策を敵視し、目先の効率をあげつらう小泉・竹中流のやり方を再び予算編成に持ち込むことは許せません。問題の多い「仕分け」には、国民の立場に立った「政治的判断」が必要です。
政府税制調査会(会長・藤井裕久財務相)も、12月11日の来年度「税制改正大綱」の取りまとめに向けて議論を進めています。
民主党はマニフェストで「『控除』から『手当』へ転換するため、所得税の配偶者控除・扶養控除を廃止し、『子ども手当』を創設」するとしています。政府税調では、配偶者控除の廃止を先送りするものの、扶養控除は廃止の方向で議論が進んでいます。民主党のマニフェストは、廃止対象の扶養控除には「高校生・大学生を対象とする『特定扶養控除』、老人扶養控除は含まない」と明記しています。それにもかかわらず、財務省は「特定扶養控除の圧縮」を持ち出しています。
これでは子ども手当を支給する中学生以下の子のいる世帯を除く、69歳以下の扶養家族のいる世帯はすべて一方的増税です。支援の拡充は当然ですが、財源を庶民増税に求めるのは筋違いです。
「『控除』から『手当』へ」のやり方は少なくない国民に一方的な負担増を強いると同時に、低すぎる課税最低限をさらに引き下げるという二重の問題があります。
旧来政治から転換し
経産省は、「検討事項」としながらも法人実効税率の引き下げを求めています。暮らしの予算を確保するために利益に相応した負担を求めるべき大企業を、さらに優遇しようとする姿勢は旧来の自民党政治と変わりません。
鳩山内閣の予算編成は、部分的には国民の要求が反映しているものの、大企業中心、対米従属という旧来政治の根本問題を引きずっています。暮らしの予算の充実を求めるとともに、旧来政治からの転換を迫ることが必要です。