2009年11月29日(日)「しんぶん赤旗」
国民の期待に応えたか
鳩山政権の「事業仕分け」
軍事費聖域 必要な予算削減
27日に終了した、2010年度予算概算要求の圧縮を目的とする鳩山政権の「事業仕分け」は、税金の無駄をなくすことを願う国民の関心を集めました。果たして期待にこたえるものだったでしょうか。
象徴的なのは、26日にあった軍事費や米軍への「思いやり予算」の扱いです。
「聖域に切り込めるのか」と注目されましたが、結局、ミサイルや新型戦車など主要な装備には手をつけずじまい。「思いやり予算」も切り込めませんでした。
「仕分け」の議論は、「思いやり予算」の中の在日米軍基地従業員の給与が「民間と比べてどうか」を問題にしただけで、日米地位協定上、日本が負担する必要がないという根本問題に触れず、予算削減も求めませんでした。
5兆円の軍事費以外でも、約320億円の政党助成金や、600億円の高速道路無料化予算が、「無駄洗い出し」の対象外におかれています。
「仕分け」で予算削減と判定された事業の中には、国民にとって無駄なものがないわけではありません。
しかし、ドサクサにまぎれるように、効果が数字で計りにくい文化・学術・スポーツの予算や水道料金が高い地域への補助や緊急消防援助隊への補助、公立学校の耐震化補助など国民生活にかかわる大事な予算が「縮減」と判定されています。
大学の学長やノーベル賞受賞者だけでなく、支援を削られる若手・女性研究者から、科学技術振興に対する長期的視野が示されないまま、目先のコスト削減論で議論されていることに、いっせいに批判がわき起こっています。
「仕分け」の議論で目に付くのは、現行制度になんらかの問題があるとして、予算そのものを削るやり方です。若手研究者支援では、「支援の種類が多岐にわたるのでシンプルに」などとして予算削減を求めています。制度に改善の余地があるからといって必要な予算を削るのは、「結論ありき」でいちゃもんをつけるようなものです。
「仕分け人」には、貧困と格差を広げた小泉内閣以来の新自由主義者が含まれ、「競争を働かせるなら健康保険を民営化・株式会社化すべきだ」「受益者負担の増加が必要」「生活保護の生活扶助基準を引き下げるべきだ」などの発言がとびかいました。
国民生活を苦難に陥れた「構造改革」、新自由主義にノーを突きつけ、政権交代を選択した国民の思いとは隔たっています。(西沢亨子)
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