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2009年11月27日(金)「しんぶん赤旗」

主張

戸別所得補償

農業の再生に道を開くために


 民主党政権のもとで、農業政策がどう具体化されるのか、重要な局面にさしかかっています。政府が農政の最重点課題としている農業者への戸別所得補償政策は、米作を対象に来年度から実施するモデル事業の内容が次第にあきらかになってきています。

 戸別所得補償政策は、農家を大小で区別せず、対象の農産物を生産・販売する全農家に、販売価格と生産コストの差額を基準として所得補償するとされています。自公政権がすすめた輸入野放しと価格政策放棄による価格暴落に苦しんできた農業者に、期待が強まっていました。

期待より不安が大きく

 ところが、戸別所得補償の対象や水準があきらかにされるもとで、農家や関係者には不安やとまどいがひろがっています。

 一つは、補償水準が米の再生産を保障するものにならないことです。米の生産費には、機械・資材代など物財費と労働費、地代などが含まれます。労働費の補償は80%とされ、過去数年間に生じた標準的な生産費と販売価格の差額を補てんするという定額部分も十分になりそうにありません。

 米の生産費調査における労働費は、生産に要した労働時間に地場労賃をかけて算出しますから、その80%では労働者の最低賃金すら保障されません。JA全中も米政策提言で労働費の100%補償を求めました。米の生産を継続し、後継者を確保するため、農家の労働報酬は少なくとも他産業なみ水準を補償すべきです。

 補償単価を全国一律にするのも問題です。米の平均生産費は1万6497円(2008年)で、北海道や東北地方は1万2000〜1万4000円ですが、中国・四国地方では2万円以上です。地域農業の柱である米の生産や水田の多面的機能を維持するには、生産費が高い地域の条件を加味して補償する仕組みが不可欠です。

 転作政策(水田利活用自給率向上事業)にも不安が高まっています。昨年までの転作助成である産地づくり交付金は、作物ごとの助成額を地域の裁量で決めることができました。麦・大豆、地域によってはソバなどの雑穀に10アールあたり5万円程度を助成した地域がかなりあり、集落営農などを支える要因になってきました。

 新しい政策では、全国一律で麦・大豆が3万5000円、雑穀などが1万円となります。助成水準の引き下げは生産意欲を失わせ、整備した機械や施設も無駄になるとの声があがっています。自給率の低い麦、大豆などの増産という政策目的にも反する事態です。

輸入野放し許さない

 民主党が日豪EPA(経済連携協定)や日米FTA(自由貿易協定)の推進を掲げていることも不安を大きくしています。戸別所得補償は初年度から補償水準を引き下げるというのですから、輸入拡大で価格が暴落したら制度自体がなりたちません。減反を拡大しながらミニマムアクセス米を輸入し続けているのも重大です。米を世界から買いあさるのは、食料増産が求められる情勢に逆行します。

 米の再生産を保障する戸別所得補償制度を構築させるとともに、これ以上の輸入野放しを許さない国民的な世論と運動をさらに広げることが、国内農業の再生にとって不可欠です。



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