2009年11月26日(木)「しんぶん赤旗」
主張
官房機密費
調査して公表が当たり前だ
国民の税金を使いながら、領収書もいらず使途も公表しなくていい、「官房機密費」をめぐる疑惑が改めて明らかになりました。
8月の総選挙で自民・公明の与党が惨敗し、政権交代が確実になった9月1日になって、当時の河村建夫官房長官が2億5000万円も引き出していたというのです。首相官邸の金庫を空にするほどの巨額の資金をいったい何に使ったのか。しかも、あとを引き継いだ平野博文官房長官が、その詳細を調査しようとしていないのも腑(ふ)に落ちません。国民の血税を使う以上、きちんと調査し説明するのは当たり前です。
平野長官の不可解な態度
「官房機密費」は、鳩山由紀夫内閣になってからも9月と10月に平野官房長官によって、それぞれ6000万円ずつ引き出されています。平野氏はその使い道についても、「私を信じて」というだけで一切説明しようとしていません。平野氏が、前政権の異常な官房機密費を調査しようとしないのは、みずからかかわった支出にもふれてほしくないからといわれても、弁解の余地はないでしょう。
官房機密費は、「報償費」とも呼ばれ、だれに何の目的でいくら使ったのか、一切明らかにしない支出として、これまでもたびたびその不正な支出が問題になってきました。国会のヤマ場ごとに巨額の資金が引き出され、「国会対策」に使われたとか、国会議員への「せんべつ」やパーティー券代に使われたなど、多くの証言があります。
同じような費目に、外務省の「外交機密費」や、警察などの「捜査報償費」などがありますが、とりわけ金額が数十億円に上る外交機密費が、首相の外遊などの際の官房機密費に“上納”されてきた疑惑もあります。財政法の原則に反する違法な流用です。
最近では、2001年と02年に、日本共産党などの追及で機密費が大きな政治問題になりました。日本共産党の志位和夫委員長が01年の国会で「報償費について」という内閣官房作成の文書を、02年の国会でかつての官房長官の「金銭出納帳」をそれぞれ示して追及しました。機密費の党略的支出の実態を明らかにし、不明朗な支出の一掃を求めたのです。
その後、官房機密費は02年度以降1割削減され、外交機密費も大幅に減額されました。不透明な支出の実態を、裏付ける結果となっているのは明らかです。
民主党は01年に、機密費の厳正な使用のため、支払先などについての記録書を作成し、公表を義務付ける法案要綱を提出したことがあります。平野長官が前政権の異常な支出についても、現政権になってからの支出についても詳細を明らかにしないのは、こうした態度に反するものです。
公開拒否は国民裏切る
機密費であれなんであれ、政府が使う金は国民の血税です。国民に隠して勝手に使ってよいなどという理屈はどこからも出てきません。流用など不明朗な支出を許さないためにも、使途を公表し国民の監視の下に置くのは当然です。
平野長官は、前政権の異常な機密費支出を解明するのはもちろん、現政権になってからの支出については進んで、その詳細を明らかにすべきです。そうでなければ、国民を裏切るとの批判を免れることはできません。
■関連キーワード