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2009年11月24日(火)「しんぶん赤旗」

主張

軍事費「仕分け」

大幅削減は避けて通れない


 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は「事業仕分け」の前半の作業で、軍事費のうち情報システムの借料などの削減を決めました。今週、米軍「思いやり予算」の一部である日本人従業員の給与負担などを検討します。

 「事業仕分け」は来年度予算の歳出の圧縮が目的の作業です。しかし軍事費についてはごく一部を対象にするだけで、大半を削減対象にしていません。これでは巨額の軍事費にメスを入れることにはなりません。ムダをなくすというなら、最大・最悪のムダである軍事費全体を思い切って見直し、削減することが不可欠です。

海外で戦争する備え

 防衛省がだした2010年度軍事費の概算要求額は、今年度予算より19億円少ないだけの4兆7008億円にのぼります。巨額の軍事費は国民生活予算を圧迫する大きな要因の一つになっています。

 にもかかわらず行政刷新会議は、対象とした外国軍用機の監視のための新自動警戒管制システム関係の借料など約800億円についてもわずか20〜30%程度の削減を決めただけです。これから検討する「思いやり予算」も米軍関係には手をふれず、米軍基地で働く日本人従業員の給与の一部の削減に終わるのは目に見えています。

 見過ごせないのはこうした細かなものだけを問題にして、軍事費のなかの本当のムダな事業には削減のメスを入れないことです。

 海外派兵の本格化のための予算は自公政権当時の概算要求と同額です。1181億円をかけてつくる新型護衛艦は基準排水量が1万9500トンでヘリを14機も搭載する巨大ヘリ空母です。ヘリを使った海外作戦が可能になります。

 防衛省は「自衛隊の国際活動基盤を充実・強化」し、「国際社会が行う各種の活動に積極的に参加」すると説明しています。新型ヘリ空母は自衛隊が米軍とともに海外で戦争し軍事介入する態勢づくりを加速するのは明白です。

 約1600億円にまでふくらんだ「ミサイル防衛」予算も同様です。日本の「ミサイル防衛」はアメリカの軍事戦略の一部であり、在日米軍基地や米国本土を防衛し、米軍が安心して世界各地に軍事介入するのを支えるものです。アジア地域の軍事緊張を高めることにしかなりません。

 日本人従業員給与以外の米軍経費の巨額負担もそのままです。グアム移転費を含む米軍再編経費(今年度の約840億円で仮置き)や「思いやり予算」などの総額は2800億円をこえます。米軍は「日本防衛」ではなく、世界への軍事介入が任務です。米軍地位協定上も日本が負担する義務はありません。

「軍事同盟絶対」やめよ

 アジアと世界は戦争ではなく、話し合いで紛争を解決する流れをつよめています。イラク戦争の失敗を契機としてアメリカの軍事的覇権主義も、大きく破たんしています。

 アメリカの軍事介入態勢を支え、日本をアメリカとともに海外で戦争する国に変える道を進むというのでは、日本はアジアと世界で孤立するだけです。

 軍事費に抜本的な削減のメスを入れるとともに、日米軍事同盟を絶対視する対米追随の政策を根本から改め、憲法9条を生かして平和外交で世界に貢献する道をこそ歩むべきです。



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