2009年11月23日(月)「しんぶん赤旗」
犯罪は生活も壊した
「被害者に国は補償を」
兵庫でシンポ
「犯罪被害者に補償を、生活再建の力を」と訴えるシンポジウムが22日、兵庫県尼崎市で開催されました。約100人が参加し、被害者4人が痛苦の体験を話しました。主催は結成1周年を迎えた「犯罪被害補償を求める会」と同シンポ実行委員会。
「会」の藤本護会長(79)は、「一般犯罪で賠償がスムーズに実施されるケースは10%ほど。一家の大黒柱をなくした場合、被害者家族は生活の再建がきわめて困難です」と指摘しました。
尼崎市でラーメン店を営む女性(53)は2002年3月、夫が客4人に暴行され重傷を負い、右半身不随になりました。裁判所は加害者4人に対して、9000万円の損害賠償を認めましたが、支払われたのは2000万円のみ。女性は声をつまらせ訴えました。
「夫は現在、店に出ていますが、以前のように働けません。メニューはラーメンとギョーザだけに絞り、売り上げは事件前の半分未満です。賠償金を開店時の銀行ローン返済に充てましたが、完済には程遠く、子どもたちの援助で利息だけを支払っている状態です。私たちは普通の生活が送りたいだけです。そのために国は補償制度をつくってほしい」
1993年、当時19歳だった一人娘を殺害された女性(62)。犯人は捕まらず、時効となりました。
「私は懸賞金100万円をかけ情報提供を求めました。精神的苦痛はひどく、いつ食事をしたか、いつ寝たかも分からない日もありました」と、遺族の苦しみを訴えました。
シンポでは、弁護士で大阪経済法科大学客員教授の前野育三氏(刑事行政学)が講演し、「犯人が逮捕されない未解決事件では被害者は民事裁判も起こせません。最終的には国による補償に頼らざるを得ません」と話しました。