2009年11月23日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
“居場所がほしい”そのワケは?
いろんな人と仲良くしたい 安心して失敗できる場必要
若い人たちの成長にとって、マイペースで人とつながり、社会とつながる“居場所”が大切だといわれます。それは、なぜでしょうか。(染矢ゆう子)
川崎市 「フリースペースえん」
川崎市高津区に、学校に通っていない子どもやひきこもりがちの若者が集まる居場所「フリースペースえん」があります。
「えん」には6歳から20代、30代の若い人たちが通います。
11月中旬、「えん」を訪れると、外でバウムクーヘン作りが行われていました。竹に生地をぬりつけて火にかかげ、くるくる回しながら焼き色をつけ、また生地をぬる―。何度も繰り返して焼き上げます。
煙が目に入り、「やだ。代わって」と悲鳴をあげながらも竹を持つ子どもたち。豚汁とおにぎりが届けられ、「おいしいね」と笑顔があふれます。
トイレ弁当
「居場所をつくって20年間の活動で大事にしてきたのは、ごはんを作って食べることです」。NPO法人フリースペースたまりば理事長で「えん」の代表を務める西野博之さん(49)は話します。
西野さんは昨年、大学生の女性から「一人で食べているところを見られたくない」とトイレにこもって弁当を食べていることを相談されました。
高校の先生にその話をしたところ、「うちの高校では昔からあります」と何人もの先生が言いました。
「子どもたちは、人間関係の中で食べることだけでも緊張しています。多くの若者たちとかかわって感じるのは、自尊感情の低さです。あなたの存在が大事だよって、口で言っても伝わりにくいけど、おいしいものを作って一緒に食べて、『おいしいね』って言える仲間の存在を感じられると、一人じゃない、ここにいていい、大丈夫って思えるんですね。そんな体験を積み重ねることで、子どもたちに自信が宿るんです」と西野さん。
学校に派閥
じっとバウムクーヘンが焼き上がるのを見ていた少年が「えん」の魅力を話します。「学校だといつの間にかグループができて、派閥ができて、いじめられたりすることもあるけど、ここではいろんな世代の人が隔たりなく仲良くできる」と。
西野さんは「自立って(働いて)稼げるようになるかどうかより、助けてが言える力だと思うんです。人を信じ、自分に自信が出てきたら歩き出します。『えん』は疲れたら、戻ってきて休む港みたいな場所ですね」と言います。
居場所づくりのカギについて西野さんはこう話しました。「『何歳になったら、何年生になったらこれぐらいできて当たり前』などの世間の目線が子どもたちの自信を失わせています。安心して失敗でき、ものさしが多様にあって、ありのままの自分を大事にできることが大切な要素だと思います」
「アニメ、政治…何でも話せる」
神奈川の民青同盟 「でいだらぼっち班」
日本民主青年同盟(民青同盟)は「居場所を力に、願い実現へ力を尽くそう」と、各地で生き生きと活動しています。
「民青同盟の班会が居場所です」。こう話すのは神奈川県相模原市に住む青年でつくる「でいだらぼっち班」の班長の男性(28)。最近一人暮らしを始めました。
「人と会う機会は職場以外では週1回の班会だけ。好きなアニメやマンガ、政治のことも何でも話せて、相手も思ったことをいってくれる。嫌なことがあっても、人間関係を投げないように成長できた」と話します。
班会議で大事にしているのは、話を聞くこと。参加した全員が近況を話す3分間スピーチは欠かせません。班員が自分の好きなことをプレゼン(発表)する「好きなこと講座」では、班長も自分史を披露しました。
集まるメンバーは多彩です。昨年11月に「派遣切り」され、日本共産党に相談。生活保護を受けながら就職活動を続けている男性(30)もその一人。無職の期間は1年を超え、50社以上受けましたが「2人の求人に260人が応募」などの状況で仕事はなかなか見つかりません。
班会では「月給20万というのはそんなに無理難題なのか?」とグチをぽろり。これにみんなが「パートだと生活はぎりぎり。正社員を願うのは当然」「面接がんばってね」とこたえます。鹿内さんは「生活の状況は変わっていないけど、班会では大変なのはみんな一緒だとわかり、連帯感がある」と話します。
昨年末、テレビで「派遣村」が放映されたとき、「仕事がなくなれば寮を追い出されることは初めからわかっていたんじゃないか」と思っていた鹿内さん。班会では、違った意見を聞くことができました。「会社都合でやめさせたのに、出て行ってくれというのはおかしい」「規制緩和を進めた政治の責任」―。
「今は、『派遣切り』の問題は『自己責任』ではなく、『政治の責任』だと思うようになりました。どんな意見も受け止めて、詳しく知ることができるし、政治を変えていけるのが民青同盟のいいところ」と鹿内さんは言います。
田上さんは「自分が成長できたように、班会議をみんなが成長できる場にしていきたい」と話しています。
お悩みHunter
結婚相談所の契約解約したい
Q 会社員です。2日前に、雑誌の広告に載っていた結婚相談所に話だけでも聞こうと出かけました。ところが、所員の人に長い時間勧誘をうけ、ぴったりの人がいるよと言われて契約しました。でも、高額なので解約したいのですが、今から解約できますか。(32歳、女性)
できます。クーリングオフを
A 2カ月を超える期間にわたってサービスを受け、料金が5万円を超える結婚相手紹介サービスは「特定継続的役務提供」にあたり、法定契約書面を受領した日から8日間であれば、「クーリングオフ」ができます。
「クーリングオフ」とは、消費者が無条件で契約を解約できる制度で、解約手数料や違約金などを支払う必要はありません。
あなたの場合、2日前の契約ですから、すぐに内容証明郵便や配達証明郵便を使って、解約の意思表示をしましょう。
文面の見本は、内閣府の「消費者の窓」ホームページなどに紹介されていますから参考にしてください。
ちなみに、仮に8日間を過ぎても、(1)契約の重要事項や「クーリングオフ」の告知などを記載した法定契約書面を消費者が受け取っていない場合や、(2)法定契約書面の記載事項に不備がある場合には、「クーリングオフ」の1日目が始まらないので、契約日から8日間を経過しても「クーリングオフ」ができます。
そのほか、契約を勧誘されている時に事業者が、契約の重要事項についてうそを言っていた、都合の悪いことを隠していた、「帰りたい」等と言ったにもかかわらず帰してくれなかったなどの不適切な行為があった場合にも、消費者は契約を取り消すことができます。
詳しくは国民生活センター、消費生活センターや弁護士会等にできるだけ早く相談しましょう。
弁護士 岸 松江さん
東京弁護士会所属、東京法律事務所所属。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。
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