2009年11月23日(月)「しんぶん赤旗」
主張
欧州の米核兵器撤去
「核の傘」ぬけだす議論をこそ
米国の核兵器が配備されているヨーロッパのNATO(北大西洋条約機構)諸国から、核兵器の撤去を求める声があがっています。12月に開かれるNATO外相理事会でこの問題が話し合われる可能性もあります。核軍事同盟であるNATOで、核兵器の役割の見直しにつながる可能性をもった動きとして注目されます。
「新戦略概念」見直し
ドイツのウェスターウェレ外相は今月、クリントン米国務長官との会談で、ドイツ国内にある米国の核兵器撤去を求めました。ドイツはこれまでNATOの会議では核兵器撤去の検討を提起したことがあるものの、米国に直接に要求したのは今回が初めてです。
これに先立ってドイツ外相は、同じく国内に核兵器が配備されているベルギー、オランダの両外相と会談しました。ともに撤去を求めていくことで歩調をあわせようとしています。
これらの国々には、爆撃機に搭載する核爆弾がそれぞれ20発程度配備されているとされます。米国はこのほかイタリアやトルコにも100発近いとみられる戦術核兵器を配備しています。
核兵器撤去の動きは今後も紆余(うよ)曲折が予想され、実現するかどうかは予断を許しません。実際、ラスムセンNATO事務総長はドイツ外相との会談で、一方的な措置をとらないようけん制しています。この問題がNATOの結束を揺るがしかねないとする懸念を示したものです。
NATOは4月の首脳会議で、同盟の目的や基本方針を定めた「新戦略概念」の見直しを決め、7月からそのための作業に入っています。1999年に採択された現在の「新戦略概念」は「あらゆる任務」が遂行できる能力を維持するとして、「核・通常双方の戦力の維持」をうたっています。欧州域内にも「適切な最小限の核戦力」を保持するとしています。
しかし、欧州に配備された戦術核兵器は、現実に使用することなど不可能で、“不必要”だとの認識が広がっています。むしろNATO域外での核拡散の動きを刺激するリスクがあります。撤去に向けた一連の動きもこうした判断にたつとみることができます。
同時に、その動きが、オバマ米大統領による「核兵器のない世界」との呼びかけに触発されたもので、核軍縮に向かう流れにあることも明らかです。
しかし、欧州から米国の戦術核兵器が撤去されても、核軍事同盟としてのNATOの性格が変わるわけではありません。大陸間弾道ミサイル(ICBM)など米国の戦略核兵器による「核抑止力」に依存するものです。
核軍縮への貢献
NATO諸国の国会議員や専門家らからは「核の傘」に依存し続けることへの批判が出ています。「核抑止力」ではなく、地域的な安全保障の枠組みなど国際協力を強めることが、平和を維持する道だとの理解が強まっています。
来年のNPT(核不拡散条約)再検討会議が5カ月余に迫っています。欧州諸国が核軍縮に貢献しようとするなら、「核の傘」の見直しが不可欠です。
欧州配備の米核兵器を撤去しようとする動きも、「核の傘」からの離脱への契機となってこそ、真の前進となるでしょう。