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2009年11月21日(土)「しんぶん赤旗」

「仕分け」に異議あり 学術・文化団体


日本学術会議

 日本学術会議は20日、金澤一郎会長の談話を発表しました。

 談話は、行政刷新会議の事業仕分けで、基礎科学や科学技術関連の項目について厳しい判定が出ていることに懸念の声も聞こえるとし、中・長期的視野に立った学術研究推進が重要と指摘。科学・技術の成果は多くの研究者の長期にわたる継続的努力の積み重ねであり、多くの研究計画が多数の研究者の議論の積み重ねで作られており、「基礎研究への投資がたとえ短期間であっても大きく減少することは、研究を実際に担う人材の離散を生じる」だけでなく、国際競争力の低下、国家的損失を招くことは明らかだとのべています。

生物・薬学分野9学会

 生物学や薬学分野9学会の会長と理事長が連名で、19日、政府に若手研究者の育成・支援の強化を求める要望書を提出しました。13日の行政刷新会議による「事業仕分け」で若手研究者の研究費や雇用にかかわる予算を減らすことが求められたのに対し、この判断が日本の科学技術の発展を大きく損なうことを憂慮するとして提出したものです。

 要望書は、民主党が科学技術政策で21世紀のわが国がめざすべきは「科学技術で世界をリードする国」でなければならないとのべていることを指摘。「科学技術を発展させるには、大学院生や若手研究者に希望を与え、その創意性を最大限に引き出すことが何よりも大切」だと強調しています。

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)に象徴される先端的研究成果も、大学院生やポストドクター(博士課程修了後の短期雇用研究者)が研究開発の現場を支えている状況であることを説明。仕分けの議論では、こうした現状への認識が正確になされていなかったとのべています。

 そのうえで、若手研究者に対する体系的な育成・支援策を示すこと、大学院生に対し欧米なみまたは現状以上の支援を行うこと、ポスドク等の任期つき研究者をわが国の科学技術の基本的な担い手と位置づけること、定職を得た若手研究者に創意性と自立性が十分発揮できるよう研究支援を強化することを求めています。

ウイルス学会・細菌学会など

 行政刷新会議の事業仕分けで、文部科学省の感染症研究国際ネットワーク推進プログラムが「廃止または予算縮減」とされたことを受け、日本ウイルス学会、日本細菌学会など4学会の幹部らが20日、緊急記者会見し、プログラムの継続と発展を強く訴えました。

 ウイルス学会の野本明男理事長は「なくすことは感染症に対するわが国の安全にとって大変問題。海外の研究者との信頼関係の上に成り立っており、一度つぶしたら二度とできず、日本の国際的信用は失墜する」と述べました。

 この事業は、今年度まで5年間実施してきた海外研究拠点形成プログラムの第2期に当たります。国内8大学2研究機関とアジア、アフリカの8カ国12施設とをネットワーク化し、人材交流や共同研究を実施。その実績は国内外で高く評価され、今後、フランス・パスツール研究所の国際ネットワークとの連携も予定しているといいます。

基礎科学研究団体

 行政刷新会議の「事業仕分け」で次世代スーパーコンピューター開発予算が来年度計上見送りを含む削減を求められた問題で、シミュレーションにかかわる基礎科学の研究者たちでつくる「計算基礎科学コンソーシアム」が18日、緊急声明を発表しました。

 声明は、スーパーコンピューターが半導体技術やバイオテクノロジーなど、やがて国民生活につながる最先端の技術開発で役立っているだけでなく、素粒子や宇宙など基礎科学の研究でも重要な役割を果たしていると強調。世界最高性能を持つスーパーコンピューターの開発は、「新たな革新的技術を開拓する原動力であ」るとして、「プロジェクトの遅延無き継続を強く求める」とのべています。

芸団協

 日本芸能実演家団体協議会(野村萬会長、72団体、9万5000人)は18日、「行政刷新会議『事業仕分け』に関する意見」を文部科学省に提出しました。

 今回の事業仕分けについて、これまでの文化政策形成を無にするような議論が進められているとし、その仕分け結果を政権としてそのまま採択することに異議を表明。「施策の成果評価が成されていないことを短絡的な理由で一律に廃止・削減を実施することは、日本における文化芸術活動の停滞を招く恐れがあり、拙速である」とのべています。

オーケストラ連盟

 日本オーケストラ連盟(児玉幸治理事長、加盟30団体)は19日、行政刷新会議が進める「事業仕分け」の「文化への予算」について、文部科学省に意見書を提出しました。

 意見書では、今回の仕分け事業が、まず削減ありきの前提で進められたこと、これまでの文化政策形成を無にして経済効率や数値で示せる成果、効果だけを優先することについて、「世界の通念からも非常識な結論であり恥ずかしい思いさえする議論の結果」と批判しています。

 また、このままでは芸術の質の低下は避けられないとし、「長期的視点に立脚する文化政策ビジョンに基づいた予算編成」となるよう求めています。



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