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2009年11月14日(土)「しんぶん赤旗」

主張

民主党「国会改革」

なぜ法制局を“目の敵”にする


 民主党の小沢一郎幹事長が推進する、「国会改革」の正体がいよいよ見えてきました。

 「政治主導」を名目に国会での官僚の答弁を禁止するなどとしてきましたが、浮き出てきたのが内閣法制局長官を排除することです。内閣としての憲法解釈などを担当してきた法制局長官の発言を封じるというのは、小沢氏の自民党時代以来の持論です。小沢氏が推進する「国会改革」が、法制局を排除し、憲法解釈を変える狙いをこめているのは明らかです。

内閣法制局長官を排除

 民主党が12日の同党政治改革推進本部で了承した方針によれば、「国会改革」の中身は(1)政府参考人制度の廃止(2)内閣法制局長官の政府特別補佐人からの削除(3)政治家同士による法案審議とは別の行政公務員、各界有識者などから意見を聴取する場の設置―などです。なかでも浮き立つのは国会で答弁が認められる「特別補佐人」からの法制局長官の削除です。

 同じく「補佐人」の、人事院総裁や公正取引委員会委員長はそのままです。内閣法制局長官だけの排除は、「法制局長官も官僚じゃないのか。官僚は(答弁者に)入らない」(10月7日)といってきた小沢氏の意向を反映したものです。

 小沢氏は、「官僚任せでは国民の望む政策はできない」などと「国会改革」の狙いを説明していますが、いまでも国会が「政府参考人」と認めない限り、官僚答弁は禁止です。例外は内閣法制局長官など「政府特別補佐人」だけです。

 だいたい、国会の議論を政治家中心にするのは、首相や閣僚など政治家が頑張ればいいことで、官僚の答弁を封じればいいものではありません。逆に、国会で官僚に対する追及ができなくなれば、国会が「国権の最高機関」として行政を監督し、国政を調査する機能の大きな障害になります。

 なぜ小沢氏は、内閣法制局長官を排除したいのか。内閣法制局は、内閣の憲法解釈を担当し、自衛隊を「合憲」と認めるなどの解釈改憲を重ねる一方、あからさまな憲法違反は認めることができませんでした。1990年の「湾岸戦争」当時、小沢氏が自民党幹事長として自衛隊を派遣しようとしたのに対し、法制局が自衛隊参加に道を開く憲法解釈の変更は認められないと答弁し、自衛隊の派兵が中止に追い込まれたことは有名です。

 小沢氏が内閣法制局の廃止や答弁禁止をいい出したのはそれ以来です。99年に自民党と小沢氏が党首だった当時の自由党が連立した際には、それまで「政府委員」として答弁できた官僚を国会の「参考人」にする法律を成立させました。ところが法制局長官は人事院総裁などとともに「特別補佐人」とされたため、小沢氏は繰り返しその排除を求めてきました。

解釈改憲拡大の危険

 内閣法制局長官の答弁からの排除は、小沢氏の持論とだけすますわけにはいきません。現に小沢氏を含む民主党が、国連決議があれば自衛隊を海外に派兵してもよいなどの解釈改憲の拡大を繰り返し、平野博文官房長官も鳩山内閣は過去の法制局の答弁に縛られないといいだしているからです。

 民主党は「国会改革」法案を今国会で成立させるつもりです。国会の機能を守り、解釈改憲の拡大を許さないために、反対の世論と運動を広げることが急務です。


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