2009年11月13日(金)「しんぶん赤旗」
公立保育園を 審議30分 民間に
「事業仕分け」に疑問
専門家の参加もないまま
行政が手がける事業の無駄を省くとして、担当職員と第三者が公開の場で議論し、必要か不要かなどを選別する「事業仕分け」。地方自治体では国に先駆け2002年から始まり、栃木県内では足利市が初めて閉庁日の10月24、25日に行いました。専門家の声を聞かず短時間で決めるやり方に傍聴した市民から疑問の声があがっています。
栃木・足利市
民間が選ぶ「仕分け人」
市が対象とした事業は公立保育所運営事業(09年度見込み総額約12億円)、世界遺産推進事業(同220万円)など60事業で総額約67億円。結果は来年度予算編成の参考とされます。
「仕分け人」は民間のシンクタンク、構想日本(加藤秀樹代表・政府行政刷新会議事務局長)が選んだ他の自治体職員や議員15人が3班に分かれて実施。「仕分け作業」チームは進行役1人、仕分け人4人、市職員1〜3人。担当課が「事業概要シート」に基づき5分間で説明、約20分間の質疑応答を経て、多数決で(1)廃止(2)市以外が実施(民間移管、国・県が実施)(3)市が実施(間接的実施、改善点あり、直接実施)―の6項目に分類します。
25日午前11時すぎから始まった公立保育所運営事業の仕分け作業を傍聴した保育関係者の女性(44)によれば、仕分け人から「定員割れしている保育園はどこか」「市中心街で職員が足りないのはどうしてか」と質問があり、職員は「山間部の園で定員割れが多い。交通手段がなく町の園には通えない」と説明しました。職員不足の理由として「多くが臨時採用で給与が安く応募が少ない」と答えたといいます。
質疑が続く中、進行役から「まとめなければ」の声でわずか30分で採決が行われ、結果は3対1で「市以外が実施すべきで民間に移管」と判定されました。
保育の質をあげてこそ
女性は「子どもの発達にかかわる事項を専門家の参加もないまま、30分間で決める考え方には納得できない」と判定を批判しました。
ある保育園の園長は「入所希望者数は民間保育園より市立保育園の方が上回っているが、農村地域の保育園施設の老朽化を理由に行きたくないとする父母が多い。職員待遇や施設整備を改善し、保育の質をあげることこそ求められる」と話します。
2日間の「仕分け作業」で事業の廃止10件、民間移管3件、国・県が実施3件などと判定されました。
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