2009年11月13日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「思いやり予算」
全廃めざす第一歩をふみだせ
政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)が、来年度予算の歳出削減の作業を始めました。
軍事費のうち焦点となった米軍「思いやり予算」は、その一部である日本人従業員の給与負担を対象に含めているだけです。「思いやり予算」については、日本共産党の志位和夫委員長が「切り込む意思はあるのか」とただしたのに対し、鳩山首相は「包括的な見直しに取り組む」と約束していました。日本人従業員の給与負担だけの「見直し」では首相の約束とも違います。
負担するいわれはない
在日米軍への「思いやり予算」は、米軍家族住宅や教会などの建設のほか、光熱水料、演習費、戦闘と不可分の施設整備など、米軍活動のほとんどすべてを対象にしています。米兵が遊びに使う高速道路料金まで負担しています。米兵の給料以外は何でもありの不当な支出です。国民が批判を強めているのは当たり前です。
防衛省の来年度概算要求のうち米軍「思いやり予算」は1919億円です。自公政権の概算要求額と同額です。このうち日本人従業員の給与約1100億円のごく一部を「見直す」だけというのが刷新会議の考えです。とても「包括的見直し」などに値しません。
重大なのは、「思いやり予算」では、米軍が負担することに決まっているものまで日本側が負担していることです。米軍地位協定24条は、米軍を「維持することに伴うすべての経費」は、「合衆国が負担する」と明記しています。「思いやり予算」で負担しているものは、本来すべて米軍に負担義務があります。協定に照らせば「思いやり予算」は全廃が当然です。
「思いやり予算」だけでなく、米軍再編経費など日本の米軍駐留経費負担額はほぼ6千億円にのぼります。米国の同盟国・友好国の負担総額の半分以上を占めます。米政府は「(米)国内でよりも、日本で米軍を維持する方がわれわれにとって少ない費用ですむ」(1995年10月25日ロード米国務次官補=当時=の米議会での証言)と認めています。「思いやり予算」をはじめ日本の巨額の負担が米軍を日本に引き止める役割を果たしていることは明らかです。
政府が「思いやる」米軍は、沖縄の少女暴行事件などをくりかえし、日本国民の安全を奪っています。米軍を「思いやる」道理はありません。歴代の自民党政権は、「米軍は日本を守ってくれているのだから」といって「思いやり予算」を正当化してきました。しかし米軍は「日本防衛」を任務にしていません。イラク戦争のように世界各地への軍事介入が最大の任務です。戦争を放棄した憲法に照らしても、米軍の戦争を支える「思いやり予算」は許されません。
軍事費削って暮らしに
行政刷新会議は「思いやり予算」以外の軍事費全体にもメスを入れようとしていません。わずかな「見直し」だけで大半を維持するのは国民の願いに反しています。
社会保障をはじめ国民生活をよくする財源を拡充するためには、大企業・大資産家優遇を改めるとともに、軍事費に思い切ったメスを入れることが不可欠です。
鳩山内閣がむだな予算の見直しというなら、「思いやり予算」の全廃など軍事費の大幅削減をまず実施すべきです。