2009年11月8日(日)「しんぶん赤旗」
普天間「決着」を急ぐ米軍事情
10月下旬に来日したゲーツ米国防長官が沖縄・普天間基地「移設」問題を11月のオバマ大統領来日までに決着せよと迫っていた問題で、ケリー国務省報道官は4日の定例記者会見で、大統領来日までの決着にこだわらない姿勢を示しました。ところが米側は、年内決着を迫っていると伝えられています。米側が決着を急ぐ背景には、新年度に予算増を確保したい米軍の思惑が働いています。
普天間問題の早期解決を特に執拗(しつよう)に迫っているのは、ゲーツ長官を含む国防総省や米軍の高官、その利益を代弁する「知日派」などです。
軍事予算の維持・拡大
4日には米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長がワシントンで講演。イラク・アフガニスタン戦争を続けるための緊急追加資金を新年度予算で要求するよう国防総省に迫り、その関連で普天間移設が実現しなければ日本とグアムでの米軍再編が進まないとし、早期移設の必要性を改めて強調しました。
ブッシュ前政権は、通常の軍事予算以外に追加予算を組みイラク・アフガン戦争を強行。2001年以降の米軍事費は7割以上増え、年6800億ドル(62兆円)に達しています。オバマ政権は追加予算方式をやめると公約していますが、マレン議長は、それを継続させ、膨れ上がった軍事費を維持、拡大することを狙っています。
年内通過が想定される米軍事予算。その審議が、沖縄での新基地建設や、それと連動させられているグアム新基地建設をめぐる動きで妨害されたくないというのが、米軍側の本音です。在沖縄海兵隊グアム移転経費は新年度予算で約3億ドル要求されていますが、米上院はそのうち2億1100万ドルを削減する修正案を策定しています。
鳩山政権は「抑止力」確保のために沖縄の基地が必要だと言いますが、実際には日本の安全保障と何の関係もない米軍の権益確保が、「早期決着」を日本に迫る大きな動因になっているのです。
戦略全体の見直し進む
そもそも、普天間基地「移設」やグアム基地強化などを連携させる米軍再編計画は、01年の9・11テロ以降の米「対テロ世界戦争」遂行のため06年に日米間で合意されたものです。ところがオバマ現政権はイラク戦争を批判し、「対テロ世界戦争」の概念も否定。アフガン戦争についても、いま駐留している7万人の米兵に加え4万人を増派するかどうかをめぐり、再検討を続けています。
現在、「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)新版の作成作業が来年初めをめどに進められ、軍事戦略全体の見直しも行われています。普天間「移設」を含む米軍再編の根本前提となる戦略そのものの再検討が進行しているのです。
そのもとで、両国の前政権が過去に合意した再編計画の執行を急がせるのは、米国の新戦略が決定される前に、既得権益を最大限確保したい米軍の意向が強く働いているからです。各国の主権尊重をうたい、「米国は決して安全保障取り決めを他国に押し付けない」(7月7日のモスクワ演説)と宣言したオバマ大統領は、どう折り合いをつけるのでしょうか。(坂口明)