2009年11月5日(木)「しんぶん赤旗」
主張
米政府解禁文書
「核密約」の履行迫る対日圧力
1964年8月の米原潜寄港受け入れ後、日本の閣僚が核積載艦船の寄港は日米安保条約上の事前協議の対象になると発言したため、米政府が「核密約違反」だと圧力をかけていました。国際問題研究者の新原昭治氏が入手した米政府解禁文書でわかりました。
文書は60年1月の日米「核密約」に従って核持ち込みの容認をくりかえし迫る米政府の強圧的態度をうきぼりにしています。
日本側が態度激変
米政府が問題にしたのは、64年9月1日の小泉純也防衛庁長官と同月3日の椎名悦三郎外相の国会答弁です。防衛庁長官は「サブロック搭載の原潜が日本に寄港すれば核兵器の持ち込みである」とのべました。外相は、サブロックミサイルは核兵器だけ装着することを認めたうえで、「事前協議の対象になる」と答弁しました。
米政府はこの答弁が、核兵器積載艦船の寄港や領海通過を「事前協議も必要としないとの趣旨の両国間の秘密了解と明らかに矛盾している」(64年9月4日の米国務省内部文書「金曜現況報告」)といっています。「核密約」違反を問題にしているのです。
前年の63年、池田勇人首相や志賀健次郎防衛庁長官らが、核兵器積載艦船や航空機による持ち込みは事前協議の対象になるとのべて、「密約違反」だと米政府の怒りを買いました。大平正芳外相がライシャワー駐日米大使から「核密約」を見せられ「こんごは適切に対応する」と約束したのに、「なぜ違反するのか」というのが米政府の怒りの原因です。
日本の閣僚の答弁は、64年8月に核兵器積載可能原潜の寄港を受け入れたあとのものです。原潜が装備している対潜ミサイル「サブロック」に装着するのは核爆雷だけと米海軍省が発表していたのを、日本が「事前協議の対象」と説明したことが「核密約」違反とされたのです。
「額面通りにとれば日本にある米軍基地の今後の実効性を阻害する意味合いを持っている」(9月4日「金曜現況報告」)とまでいっています。「核密約」が日本を米核戦略に組み込み、核基地にする協定だったことを認めた形です。
見過ごせないのは、ライシャワー大使が国務省の指示にもとづいて大平自民党副幹事長に会い、「核密約」の履行を迫ったあと、日本政府の見解が大きく変わったことです。「アメリカが一方的に核兵器を持ち込むことはありえない」とか、「猜疑心(さいぎしん)を働かしたら日米協約体制はくずれる」などといって、寄港や領海通過そのものをまったく問題にしなくなりました。
安保の闇をあかるみに
米国が事前協議をいわないからと、もっぱら対米信頼を強調する態度はその後の政府見解を形作っています。米国との信頼さえあれば、国民の信頼はどうなってもいいのか。日本政府の対米外交の足跡はあまりにも異常です。「核密約」を公開させ、対米従属の自民党政治を一掃することが重要です。
もともと「核密約」は米政府が旧安保条約下の核兵器自由持ち込み態勢を新安保条約下でも確保するために押し付けたものです。安保条約と一体の「核密約」は日本とアジアの平和を危険にしてきた元凶です。「核密約」を破棄し、日本を文字通り「非核の日本」にすることが重要です。