2009年11月3日(火)「しんぶん赤旗」
アフガン大統領選、決選投票せず
選管「カルザイ氏当選」
正統性に疑問符
アフガニスタンのアブドラ前外相が大統領選挙の決選投票不参加を表明したことを受けて、同国の独立選挙委員会(選管)は2日、現職のカルザイ大統領が当選したと宣言しました。しかし決選投票が回避されたことで、選挙結果の正統性に付けられた疑問符はぬぐえないままです。(安川 崇)
求心力低下も
ロイター通信によると、選挙委員会責任者は同日の記者会見で、カルザイ氏を勝者と宣言した理由について「同氏が1回目の投票の勝者であり、決選投票の唯一の候補者だからだ」と述べました。
選挙当局者は当初、候補者1人でも決選投票を実施すると述べていました。しかし反政府武装勢力タリバンが選挙妨害を宣言していることなどから、取りやめを判断したとみられます。
同国憲法の規定では、1回目の投票で過半数を得る候補がいない場合は決選投票を行うとされています。
8月に実施された1回目の投票で、いったんは1位のカルザイ氏が過半数を得たと発表されました。しかし大規模な不正が指摘され、同氏に投じられた数十万票を集計から除外した結果、得票率は49・7%に下がりました。この時点で、選挙の信頼性は大きく傷つきました。
決選投票で2位のアブドラ氏に勝利することで、カルザイ氏は最低限の信頼回復を実現できると受けとめられていました。その機会は失われ、同氏は求心力を低下させたまま政権運営を続けることになります。
首都カブールの政治評論家はロイター通信に「カルザイ氏は正統性を失った。非常に立場の弱い大統領になるだろう」と語っています。
アフガンの政情がさらに不安定化すれば、部隊増派を検討している米オバマ政権の判断にも影響が及ぶ可能性があります。部隊を派遣している諸国では撤退世論が強まっており、有権者への説明に苦慮する場面も出てきそうです。