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2009年11月1日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「金融円滑化法案」

急いで総合的な緊急対策を


 鳩山内閣が中小企業向けの融資や個人の住宅ローンを対象にした「金融円滑化法案」を閣議で決定しました。

 法案は金融機関に対して、融資の返済期間の延長や金利の軽減など、資金繰りに苦しむ中小企業や個人の要請に応じる「努力義務」を課しています。

 金融機関は対応の状況を定期的に報告し、それを政府が半年に1回まとめて公表します。虚偽の報告など、悪質な事例には罰則が科されます。

3割が転廃業を検討

 全国商工会連合会が10月に実施した小規模企業調査によると、廃業や転業を「検討中」、または今後「検討せざるを得ない」と答えた企業は3割を超えています。中小企業が直面している経営危機は極めて深刻です。

 その原因の一つが銀行の「貸し渋り」「貸しはがし」です。日本政策金融公庫の10月の調査によると、中小企業の資金繰り判断は26カ月連続のマイナスとなっています。金融機関の貸し出し態度は昨年から一気に悪化し、今なお厳しい状況が続いています。

 ばく大な内部留保をため込んでいる大企業と違って資金力に乏しい中小企業の資金繰りは、金融機関の貸し出し態度に決定的な影響を受けざるを得ません。

 三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大メガバンクは、中小企業への貸し出しを1年で2・6兆円も減らしました。立場が弱い中小企業を「貸し渋り」「貸しはがし」の標的にする大銀行の姿勢は、根本から改めさせる必要があります。

 法案は返済の繰り延べなど中小企業の要請に応じるよう金融機関に「努力」を求めています。実際に金融機関の姿勢を変えさせることができるかどうかは、政府の徹底した指導にかかってきます。

 金融機関が要請に応じたとしても「今後、新規融資が受けられなくなるのではないか」「その他の取引で、金融機関から不利な取り扱いを受けるのではないか」―。中小企業からは、不当な扱いを心配する声もたくさん上がっています(全国商工会連合会の調査)。

 新たな「貸し渋り」など銀行の横暴な仕打ちを禁じ、中小企業への新規融資を確保する政府の強力な指導、きめ細かな監督が求められます。この制度を利用した中小企業が、国や自治体の公共事業の受注などで不利な扱いを受けないような措置を取ることも必要です。

 「金融円滑化法案」の決定と同時に、経済産業省も中小企業の資金繰り対策を発表しました。昨秋からの「緊急保証制度」の対象業種を見直すとしています。業種の追加にとどめず、全業種を対象にして、審査要件の緩和や据え置き期間の延長を図るべきです。

仕事を増やす対策を

 商工中金が10月28日に発表した調査によると中小企業の売り上げは12カ月連続で減少しています。日本共産党は資金繰りの支援にとどまらず、仕事の確保を含めた総合的な緊急対策を求めています。

 中小企業向けの雇用調整助成金を抜本拡充し、大企業の「下請け切り」をやめさせ、倒産・廃業を防ぐための休業補償・直接支援を実施すべきです。さらに、役所の仕事を中小企業に優先発注することや、公共事業を生活密着型に切り替えるなど中小零細企業の仕事を増やす対策が重要です。


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