2009年10月28日(水)「しんぶん赤旗」
給油から海賊対策へ
防衛相検討 インド洋の海自艦転用
北沢俊美防衛相は27日の記者会見で、アフガニスタンでの「対テロ戦争」支援としてインド洋で給油活動を行う海上自衛隊が来年1月の法律の期限切れに伴い撤収した後、アフリカ・ソマリア沖の「海賊対策」に海自部隊を転用する方向で検討していることを明らかにしました。北沢氏としては、ソマリア沖での船舶護衛などを定めた現行の「海賊対処」派兵法改定などを視野に、政府内の調整を急ぐ考えです。
政府は、インド洋での給油活動の根拠となる新テロ特措法が来年1月15日に期限切れとなるのに伴い、海自を一時撤収させる方向で調整しています。給油活動に代わりアフガニスタン支援策として元タリバン兵の職業訓練などを検討中で、11月のオバマ米大統領初来日までに概要を取りまとめる方針です。
これに関し、北沢氏は「最も考えられるのは、給油活動の技術と経験を別のところで利用する(ことだ)。防衛省とすれば対応しやすい」と指摘。その上で、ソマリア沖で「海賊対策」を行う各国艦船に海自部隊が給油支援を行う可能性について「十分考えられる。(直接のアフガン支援ではなく)クッションが入った感じにはなるが、国際貢献とすれば評価できる」と述べました。
解説
事実上の活動継続
|
アフガニスタンでの「対テロ」戦争支援を行う海上自衛隊部隊をソマリア沖の「海賊対策」に転用するということは、事実上、「インド洋での給油活動」の継続となりかねません。
北沢防衛相が海自部隊による給油活動の可能性を言明したソマリア沖の「海賊対策」は、アデン湾を主な活動海域にしています。
例えば、「防衛白書」2009年版(7月発行)は、ソマリア沖の「海賊対策」で、国連安保理決議が各国に「アデン湾における海賊行為を抑止するための行動を要請」していると紹介。「米国、英国…などがソマリア沖、アデン湾に軍艦などを派遣している」と指摘しています。
一方、インド洋で「対テロ」戦争支援を行っている海自部隊の主な給油海域の一つも、アデン湾です。
同「防衛白書」は、「海自はインド洋において、アメリカ、イギリス…など、テロ対策海上阻止活動を行っている各国艦艇に対する洋上での補給活動を行っている」と指摘。「主な補給場所」として、「オマーン湾」「北アラビア海」のほか「アデン湾」を挙げています。
つまり、米軍など各国艦船は、アデン湾で、「海賊対策」や「対テロ」作戦を同時に展開していることになり、海自部隊が現在行っている給油活動は、「海賊対策」への脱法的な支援になっている可能性があります。海自部隊による給油活動を「海賊対策」に「転用」すれば、逆に「対テロ」戦争への脱法的支援になりかねません。(榎本好孝)
■関連キーワード