2009年10月27日(火)「しんぶん赤旗」
主張
鳩山首相演説
期待と不安にこたえているか
政権交代から40日たって臨時国会が召集され、鳩山由紀夫首相の初の所信表明演説を聞きました。
「今の日本を何とかしてくれないと困る」という国民の声が、この政権交代をもたらしたのだと認識している―首相は演説をこう切り出しました。そう考えるなら首相に求められるのは、そうした国民の期待と不安に正面からこたえることです。
「大掃除」はいうものの
国民は8月の総選挙で10年間の自公政権に「ノー」の審判を下し、長きにわたった自民党政治に終止符を打ちました。首相は演説で「戦後行政の大掃除」に取り組むとのべましたが、「財界中心」「日米軍事同盟中心」という自民党政治の「二つの政治悪」から抜け出す姿勢に踏み込むのかどうか、問われていきます。
首相は、「大きな政府とか小さな政府とかいう前に、弱い立場の人々、少数の人々の視点が尊重されなければならない」「市場にすべてを任せ、強いものだけが生き残ればよいという発想や、国民のくらしを犠牲にしても経済合理性を追求するという発想が成り立たないのは明らか」といいました。自公政権時代の「構造改革」路線とは一線を画す姿勢です。
環境や外交の問題でも、温室効果ガスの排出量を2020年には1990年比で25%削減する決意や、子どもたちに「核のない世界」を残す一歩を踏み出す、「不退転の決意」が語られました。
しかし、国民が切実に実現を求めている問題では、具体的な政策や目標があいまいです。民主党のマニフェスト(政権公約)や連立3党の政策合意に「廃止」が盛り込まれた後期高齢者医療制度についても、「廃止に向けて新たな制度の検討」と、先送りする態度です。これでは国民の期待に十分こたえることはできません。
とりわけ、財界の抵抗が強い労働者派遣法の抜本改正について、一言もなかったのは重大問題です。国民の期待を裏切ることになりかねません。雇用破壊の最大の原因は、人間を使い捨てにする非正規雇用の拡大にあります。派遣法を抜本改正し“正社員が当たり前”の社会を取り戻すことは、緊急の課題です。
首相が、沖縄での普天間基地の撤去や新基地建設など緊迫する米軍再編問題についても、マニフェストでの「見直し」という表現を使わず、日米同盟を堅持し、「真剣に取り組んでいく」としかいわなかったのも問題です。岡田克也外相は日米合意を理由に、県外「移設」は選択肢にならないと発言しました。「基地たらいまわし」は認めるわけにはいきません。国民の声にこたえるなら、無条件で普天間基地を撤去するよう、アメリカに要求し、交渉すべきです。
国民の世論と運動強めて
日本共産党の志位和夫委員長は国会開会にあたっての議員団総会で、政治を変える「期待」、新政権への「不安」、新しい政治の「探求」という、国民のすべての気持ちにこたえる奮闘を呼びかけました。
新政権の行方にはまだ不透明さが残ります。国民の期待に沿って政治を前にすすめるには、「よいことには協力、悪いことには反対」を貫き、政治のゆがみを大本から正す「建設的野党」の日本共産党の奮闘と、国民の世論と運動の強化がますます大事です。